「すまんな。総司が喜ぶな。」「総司?さっきの方?」「ああ。」
優しい顔立ちをしている。
「私、宮本 咲と申します。宜しかったら今度、団子屋に来てください。」「ああ。ありがとう…な…。」「いいえ…。」「俺は土方歳三だ。俺とは…6歳違うな。」土方歳三さん…。か…。
頭をよぎる名前。なんだか安心する名前。
「どうだ?屯所で団子は?」「はい!頂きます!」
夜の道を2人で歩いた。
京の都での天才芸子と言われた宮本咲(君菊)と、土方との運命の出会いだった。


「近藤さん。帰った。」
足音が激しくなり、隣には私がいた。
「おおトシ!お嬢さんまで!」「お邪魔します。」「あー!お嬢ちゃん!さっきのお嬢ちゃんだ!ねぇ…。来たってコトは俺の部屋で寝ない?」「遠慮しておきます。」
お団子を持つ土方さん。
私に手招きをすると、近藤さんがいる居間へ案内した。
「へぇ…。いやぁ…。近くでみればかなり美人なんですな。」「やめてください!」近藤さんは私の顔を覗き込み、言う。
「だがなぁ。こんな町娘を連れ込み良いのだろうか…」
深刻な顔をする土方さん。ソレを見て近藤さんが言い出した。
「松島の芸子になるのは…」「えっ?」
突然の言葉に耳を疑う。
「芸子の方が楽ではないか?私の知り合いの妹が芸子をやっていてなぁ。」「はぁ…。」
「小娘に言う話じゃねえよ。」「はい。突然言われても…」
芸子?男の人に触られるのに喜びを感じる汚らわしい女…。
私が…?ヤダ…。
「とりあえず、今から寝ろ。あと、俺の部屋を使え。今日は近藤さんと、話でもする。」「はい!」「服装と、髪型替えておけよ。」
そう一言言うと、私に部屋を案内し、おやすみとつぶやいた。