「こらこら…。咲…。はよぅ起きな!」「陸奥姉…さん…。」
目の前で私を起こしたのは、美紀さんではなく…。陸奥姉だった。
「ったく…。美紀にしろ、咲にしろ、世話が焼ける。」「え?」

いつも通りに隣にいる美紀さんがいない事に気づいた。
「美紀さんは?」「駆け落ちだとよ。」「ぇ…?」
突然の事に驚きを隠せない。駆け落ち…?
「全く…。店の裏で泣いているよ…」「ッ!」
寝巻きを来たまま、店の裏に向かう。
だんだん泣き声が近づいて来る。「美紀さん!」
しゃがみ込んで、振り向きもしない。その後ろ姿を、見ているのは、タダの最低な人間。直ぐさま美紀さんの隣に座った。
「さ…き……。咲?」
真っ赤に腫れ上がった美紀さんの顔は、まるで芸妓ではないような顔だった。
「なんで駆け落ちなんか…。」「身分が違う…。違い過ぎる…。」
私はまた、身分の2文字に引っかかる。
「土佐…。殺された…。血…。ガッ…。」
何を言っているかさえ、分からなかった。
私はただ、隣にいるしか出来ない。