次の日。

強かった雨もすっかり去って、今日は雲一つない晴れ模様!


「あー!すっごく気分がいい!」

奏は日の光を浴びながら伸びをする。

最近お父さんも仕事で帰ってこない日が増えてきて、自分で家事をすることが多い毎日だが、不便な事はない。

「さぁて、今日も一日頑張らなきゃ…」




そう言ったその時


 ばうばうばうっ!!

「ぎゃあああ!ひぃぃぃ!」
「えっ!」

庭から甲高い悲鳴が聞こえて、奏は慌てて外に出た。

「いみゃぁぁぁ!たすっ…助けっ…!」

悲鳴はまだ続いている。

きっとキュリオスが人を追い掛けてるんだ!

キュリオスはこの家の犬で、ラブラドールの名前。

角を曲がるとキュリオスが何かに飛び付いている。

「こらぁキュリオス!人を襲っちゃダメって何回言えば…」
「うわぁぁぁぁぁん!!」

絶叫していた高めの声の人物は木の影に隠れる。
奏が黙ったのはそれが原因ではない。

奏が見ていたのは…


「キュッ…キュリオス、これは…」

奏の言葉に答える様に、キュリオスはただ一度鳴いた。


 わん!

「いや、わんじゃなくて…」

地面にはキュリオスが散らかしたのだと思われる白い羽が散乱していた。
奏はそのうちの一つを拾う。
昨日、雨に濡れていた羽と同じ…


「こ・れ・は…白鳥?」







いやいや鳥じゃないんだって。



奏が僅かに涙声をあげている人物の方へと視線を戻した。

「うぅ…動物ってやっぱり苦手…」

喋り方から…男…だろうか…
高い声が引っ掛かるけど…

「大丈夫…きっと大丈夫…僕は誰にも見えてない…そうだよ、見えてる訳ないよね…」
「あの…」
「うひゃあ!!」

奏が声をかけると彼は勢いよく木の影から飛び出して来た。

彼自身はそんな気はなかったらしいが

「あっ…」

奏は絶句した。
目の前には正真正銘の天使がいた。





…男だが