記憶の桜 -花空残夢-



でも、俺は声をかけられなかった。




惚れてる女が泣いているのに、声もかけられない。




最低な男だな、俺は…。




自分の無力さに怒りを覚えながら、俺は寝室に戻った。




涼が戻って来たのは、それから四半刻後だった。




ベッドに入って来た彼女の身体は冷え切っていて、かなり冷たかった。