記憶の桜 -花空残夢-



「何故、私に?」




「これは姉上が持つべきだと思って。それを持っていれば、母上がきっと守ってくれるから」



私は扇を握り締め、頷いた。




もうじき、蝦夷に着く。




そうすれば、彼とも逢える…。



「安心したら、船酔いして来た…」




「えっ…、ちょっ…、待っ…、わーーっ!?」




何故、いつも良い雰囲気の時にこうなるのよ…。




彼に逢えるというのに、結局、船酔いで気分が下がってしまった。