ただ、想うのは…。




『あいつに逢いたい――』




その気持ちだけだ。




逢って、この空虚さが何なのか確かめたい。




でも、それは出来ねぇ…。




「くそったれが…」




辛くなれば、あいつに縋り付く…。




男として最低だ、俺は…。




俺は拳を握り締め、もう一度、長椅子に寝転がった。




目を閉じれば、あいつの顔が浮かんで来る。




「涼…」




俺の小さな呟きは静かな室内に溶けて行った――。