記憶の桜 -花空残夢-



そんなある日。




私は自室で繕い物をしていた。



「涼、ちょっと良いか?」




「あ、はい!」




土方さんに声をかけられ、私は繕い物を止め、障子を開けた。




「どうしましたか、土方さん」



「榎本さんが来た。茶を頼む」




榎本さんとは、榎本武揚さんの事だ。




旧幕府海軍の副総裁で、何艦もの戦艦を引き連れ、仙台に北上して来たらしい。




「分かりました。今、入れて来ますね」




私は勝手場に向かった。