ぼそりと陽碧君が呟いてため息をついたのを見て、自分の考えがあっていたことを悟ってしまった。


「ん?なんか言った?」

「いや…なにも」


ふいっと知らないふりを決め込む陽碧君。

…それにしても。


「二人とも仲良いわよね…。あ、もしかして…、早和もどこかのお嬢様だったりするの?」


パーティーとか、親の商談とかの関係で出会ったとか…?

私と東雲渉は仲良く…なんてそう上手くはいかなかったけれど。

そういえば、久城財閥っていうのも聞いたことがあるし、やっぱり…


「えっ?私…!?ま、まさか!私なんかがそんな…お嬢様なんてありえないよ!明とはただの幼馴染ですっ!」


胸の前で手を大きく振って思いっきり否定する早和。

その様子はうそをついている感じじゃない。

…ってことは、私の気のせいか。


「そうなんだ…」


そう言って完結させようとした時。

視界の端で、東雲渉と陽碧君がほっと息をついているのを見てしまった。

………なにか、あるわね。

自然とそう勘が働く。

ほぼ間違いなく早和は久城財閥の御令嬢なんだわ。

だけど、久城に娘がいるっていうのは聞いたことがないし…。

本人も知らないみたい。

なにか、早和に自覚させたくない理由があるのかしら。

不思議に思ったけど、それは表には出さないでおいた。