「いち…に…さん…し…ご…」


ドォ――――――――………ン…!!


…あ、れ…?


「怖く…なか…った…」

「だろ?」


クスッといたずらが成功したような子供っぽい笑顔で渉が言った。

なんで怖くないんだろ。

心の準備ができるから…?

よくわかんないけど、全然恐怖を感じなかった。

すごい…。


「もう、大丈夫だろ?」

「…うん…」


なるほど。

この方法なら大丈夫。

かといって、雷が鳴るたびに立ち止まるわけにはいかないけれど。

私がとりあえず頷くと、渉が私から少し離れて、床に落ちていたバッグを取ってくれた。


「はい」

「あ、ありがとう」

「どーいたしまして」


お礼を言って受け取ると、「今日はやけに素直だな」と言ってニヤリと笑われた。

そうかしら…?

確かに、雷が怖くて弱気になっちゃってるところはあるけれど…。

…ていうか、それよりも。


「なんか…楽しんでる?」

「もちろん。素直な結希なんてめったに見れないし」


その答えに、思わずものすごく冷めた目を向けてしまった気がする。

そして「思わぬ弱点もみつけたし」と続けて言われ、やっぱり渉は性格が悪いと思った。

人の弱点みつけて喜ぶってどうなのよ。

なんか…優しいんだか性格悪いんだかよくわからなくなる。