雷のこと?
今はそれしかないわよね?
うーんと内心首をかしげながら考える。
その間にも時々ゴロゴロと雷が鳴って、その度にビクリと震えると渉が頭をなでてくれた。
そのしぐさに、なんだかとても安心する。
人の温かさがあると安心できるから不思議。
…今、この体制になっている意味も不思議だけれど。
「雷が怖くならない方法…って、知ってるか?」
え…?
しばらく渉に抱きしめられていると、ふいに頭上からそんな言葉が聞こえた。
「雷が…怖くならない方法…?」
「そう」
そんなのあるの…?
「知らない…けど…」
「じゃ、教えてやるよ」
そう言って、一度私を解放してから立つように促す。
…関係ないけど、そのエスコートの仕方に全く無駄がなくて、さすが御曹司だなと思う。
やっぱり、こういうのはお父様とかに教え込まれてるのかしら。
促されるままに立ちあがって、手をひかれて窓の近くに立った。
その瞬間ピカッと稲妻が走り、私はまた小さな悲鳴を上げて隣の渉にしがみつく。
すると渉はクスッと笑って、安心させるかのように私の背をポンポンとなでた。
「雷が怖くなくなる方法だけど」
しがみついて震えたまま「うん」と頷く私。
「稲妻が光るだろ?そしたら、空を見上げて、音が鳴るまで数えるんだ。目を瞑らないで」
「え…?」
…それだけ…なの?
半信半疑で渉を見ると、ニヤッと悪そうな顔で笑った。
「ま、とりあえずだまされたと思ってやってみろよ」
「ほら来るぞ」と渉に言われ、空を見上げる。
ほどなくしてピカッと稲妻が走り、思わず目を瞑りそうになったけど我慢した。

