腹黒王子×ツンデレ姫様【完】



あまりに突然な出来事に対応できなくて、小さな悲鳴を上げて体制を崩す。

そのまま倒れる…かと思ったら、ポスンと何か温かいものに受け止められ、包み込まれた。

………え?

今、何が起きたの?

…ていうか、なにが起きてるの?


「…大丈夫だから」

「………っ!!」


混乱する頭を整理しようと頑張っていると、頭の真上から呟きが落ちてきた。

その小さな…近すぎる声を聞いて、やっと渉の腕の中にいるのだと理解する。

それと同時に反射的にもがいて渉のなかから脱出しようと試みるけれど…


「だーめ」

「えっ、ちょ…ちょっと…っ」


何故かさらにギュッと力を入れられ、どれだけ頑張っても抜け出せなくなってしまった。

渉は何がしたいの…?

どうして、こんなことになってるの…?

そもそも、なんでここに渉がいるの…?

とりあえず、もがくことを諦めると次々と疑問が浮かんできた。

もしかして、渉も何か忘れ物をしたのかしら。

でも、その忘れたものはまだ取ってないみたいだけど…。


「あの、わ、渉…?」

「んー…?」


私の声は完璧にとまどっているのに、渉の声はのんき過ぎるほど。

以前よりは渉の素…というか、本性?みたいなものは見れてるけど…やっぱり、渉って何を考えているのか分からないところが多い。

今もそう。

どうして、私を抱きしめているの…?

私が、怖がってるから…?


「どうしたの…?」

「うー…ん…。内緒」

「…内緒、て…」

「まぁ、とりあえず。大丈夫だから」


え…と。

何が“大丈夫”なんだろう。