そうじゃない。
私が怖いのは、そんなのじゃなくて…
ド―――――――………ンッ!!!
「ゃっ…、きゃぁぁぁぁあっ!!!」
先ほどのものよりも数倍大きな音がして、かすかな振動が伝わってきた。
その確実に落雷したであろう音と振動に、私は堪え切れなくなって悲鳴を上げる。
そのままギュゥゥゥッと強く目を瞑っていると、温かい手が私の頭をなで始めたのを感じた。
「…結希、もしかして…雷、ダメ?」
どうすることもできなくて、ただコクコクと必死に頷いて…ふと、渉の声がすごく近いことに気がついた。
「…ぇ?…あ、ひゃぁっ!?」
「…あ、残念」
雷の恐怖で無意識のうちに渉に思いっきりしがみついていたことに今更気が付き、慌てて離れると渉が小さくつぶやいた。
…ざ、残念ってなによ!
何が残念なわけ…?
とにかく、無意識とはいえ迷惑をかけてしまったのは確かだ。
「…あの、ごめん…なさい」
なんだか渉の顔を見れなくて、うつむいて小さく謝ると、頭上からクスッと笑う声が聞こえた。
「別に、謝らなくてもいいけど?」
「…で、でも…迷惑…だったでしょ?」
「………。いや、別に?」
「いや、別に」の前の間はなんなのよ?
そう思ったけど、考えてもわからなかったので考えることを放棄した。
それに、体の震えはまだおさまらないままで…
そのせいなのかなんなのか、あまり力が入らない。
腰を抜かす…とかいう事態だけはイヤなんだけど。
そう思いつつも、震えて上手く動かせない指先でただ自分を抱きしめるしかできない。
「…結希って、案外怖がりだったんだな」
「…別に、怖がりなんかじゃ…」
そう言いながらも震えていると、突然右腕をつかまれて引っ張られた。
「…っ、きゃぁ…!?」