季節は流れ…受験勉強に忙しかった夏休みを無事終え、暑さを残したまま、2学期へと突入した。
あの後から3人組は一切見かけていない。
そして、あの後から…
「結希」
「ん?なによ?渉」
「そっち持って?」
「はいはい」
私と渉の関係は、少し…いや、かなり?変わった。
どちらにしろ、良くなっているのは確か。
渉と私は、お互いを呼び捨てで呼び合っている。
それに敬語を使うのもやめて…普通の友達として接するようになった。
渉のことは、以前よりは信じることができる。
腹黒で、怖い時もあるけれど…でも、優しさを持っている人だって気がついたから。
渉は何も言わなかったけれど、あの時の脅しはもちろん渉の家のためなんかじゃなくて、ただ私を助けるために言ってくれたもの。
私なんかのために、あれだけのことをしてくれた。
それに…後で早和が本当に私を親友だと思ってくれている、と教えてくれた。
なぜ、私が気にしていたことをぴったり当てられたんだろう…。
何度考えても、不思議でならない。
本人に訊いても、ニヤリと笑うだけで、教えてはくれなかった。
「やっばい!忘れ物…!」
暗くなりかけている廊下を、目的の教室まで走る。
急がないと、雨が降り出してしまう。
窓から見えている空はもうすでに灰色の雲で覆われ、あたりは暗くなってしまっていた。
…早くしなきゃ…。
いやな予感がする…。
ドクドクと速くなる鼓動を抑えて、教室のドアを開け、足早に教室に入る。
自分の席の机の中を見ると、予想どおりに忘れ物が入っていた。