腹黒王子×ツンデレ姫様【完】




「君たち、なにやってるの?」

「え…あの、えっと…」


東雲渉が問いかけた途端に、しどろもどろになる3人組。

目をきょろきょろとさせている。

その3人を見て大きなため息をついた東雲渉は、一度目を瞑った。

そして、その瞳をもう一度のぞかせた時。


「「「「…っ!」」」」


東雲渉は…その場にいた、私を含める全員が息を飲むほどの冷たい目をしていた。


「わ…わたる、くん…?」


3人のうちの1人が、おそるおそるといった風に東雲渉を呼ぶ。

その勇気に、素直に称賛を贈りたい気分だわ。

だって、あの瞳から放たれる威圧感に…私は声を出すことも、身動きすることすらも…できないのだから。

鋭く冷たい目をした東雲渉が私たちを見下ろしている。

…いつもと、違う。

まったくの別人のように感じる。

だって東雲渉は、いつも品の良い笑顔を張り付けていて、丁寧な口調で、丁寧なしぐさで私に接するから。

…怖い。

自然と、恐怖が心を占めていく。

身を固くしたまま東雲渉を凝視していると…。

東雲渉の視線が流れ、ふと私に止まった。

……え…?

あることに驚いて目を見開いたけれど…その一瞬あとには、東雲渉の視線は先ほど名前を呼んだ女子生徒へと向けられていた。

東雲渉の瞳が私をとらえた時。

ふっ…と、一瞬だけその瞳が和らいだように見えた…。

ただの気のせい…?

内心で首をひねる。


「…あなたのお父様は…成宮商事の現社長でいらっしゃいますね…?」


考えを巡らしているうちに、東雲渉が女子生徒へと話しかけた。

…のだけれど。

ん?

成宮商事?

そこそこ有名な中小企業じゃない。

そこの娘だったのね…。

意外な事実に女子生徒へと視線を向けた。