腹黒王子×ツンデレ姫様【完】




「明君と渉君のことよ!!」


ぼーっとさっきよりもすごい顔になった3人を見ていると、そのうちの1人が叫んだ。

…あの2人、『王子』なんて呼ばれてるんだ?

はじめて知ったわ。

まぁ確かに整った顔はしているけど…。

そこまで言われるほどすごいなんて思ったことはなかったわね。

早和も2人が『王子』なんて呼ばれているなんて知らないみたいだし。

ていうか…これ、私が悪いんじゃないわよね?

私が早和と仲がいいから必然的にあの2人に近付いてしまったってだけで。

媚なんて死んでも売るつもりないから。

思わずため息をつきそうになった時。


「久城さんもかわいそうよね。あんたみたいな人と一緒にいて」

「…っ!」



別の1人が言った言葉に、思わず反応してしまった。

やっぱり、私は早和にとってイヤな存在なのかな…。

弱気な私が顔を出す。

私の顔色が変わったのを見て、3人組がニヤリと笑った。

だけど、私にはそんなことを気にする余裕なんてない。

一度考え出すと、思いは止まらない。

うつむいて、スカートをギュッと握りしめる。

視界の端に足をあげている3人が見えたけれど、なにも感じなかった。

その足が私を蹴ろうとした瞬間…


「なにやってんの?」


どこからか、聞きなれた声がした。

だけどそれはいつも私に向けられるような口調じゃない。

そのせいなのか、反応が遅れる。


「「「わ…渉君っ!?」」」


3人の驚愕した声を聞いて、やっとその声の主が東雲渉で間違いがないのだとわかった。

ゆっくりと顔をあげて、東雲渉の姿を探す。

その姿はすぐにみつかった。

東雲渉はニコニコとしながらこちらへ歩いてくる。

だけど…なんていうか、いつもとは違うような…。

違和感がある。