Iさんの話である。

Iさんは夜勤をしていた。

良い季節だったので患者も少なく、比較的病棟が落ち着いていたため、Iさんは座りながら少しばかりうとうとしてしまった。

夢と現実を行き来していると、ふと、背後五メートルあたりのところに女がいるのがわかった。

振り向いていないのに、女の服装までわかる。

赤い半袖のタートルネックセーターに、黒くて長いスカートをはいていて、微動だにせず立っている。


夢だなと思った。


深く考えずまたうとうとすると、女がさっきより近いところにいるのがわかった。

それでも気にせずうとうとしていると、さっきよりもっと女が近づいているのがわかった。


なんだ、これ。


夢の続きにしては気味が悪い。

Iさんは頭をしっかりさせようとした。

きちんと覚醒して振り返ると、誰もいない。


やっぱり夢か。


ほっとしてしばらくするうち、やはり眠気に襲われた。

強烈な眠気に。

どうしても抗うことができず、再びうとうとすると、背後にピタリと添うように、あの女がいるのがわかった。


なんだ。

なんなんだよ。


Iさんは必死で目を開ける。

振り返る。

誰もいない。

息を吐いて視線を前に戻したとき、

目の前に
白い女の顔があった。