電話をかけようと思い、携帯を開くと3件の着信。
―――全て貴也から。


少しだけ、いつもとは不規則に動く心臓を抑えながら発信ボタンを押す。
するとコール3回で声に繋がった。


「もしもし!?」

「も、もしもし…?どうしたの?」


少しだけ切羽詰まった声を出すから、余計動揺してしまう。


「どうもしないけど、会いたくなった!
今日塾じゃなかったって思ってたんだけど。」

「塾じゃないわ。」

「今、どこ?」

「道路の上。」

「え、外なの?」

「…外ね。寒いわ。」

「今何時だか分かってる?」

「9時くらいでしょ。」

「里穂は可愛いんだから、こんな夜道一人で歩いてたら危ないだろ?
もー!迎えに行くからそこから動かないで。」

「…って言ったって私がどこにいるか分からないでしょ?」

「そうだった!今どこ?」

「もうすぐ家よ。」

「じゃー家行く!」

「…そう。じゃあ…。」


いつもなら『そう』の一言で終わる。
でも今日は…


「待ってるわ。」


…待ってる。私も、今日はあなたに会いたいから。