「は─...何、ソレ。」

千夏の目が赤くなっていた。

「頼む─。別れて...くれ。」

俺は頭を下げた。

「...あたし...こんなやり方で
誠司のこと...ほんとは手に
いれたくなかったんだよ─。」

俺は頭を上げなかった。

「もう、良い。どうなっても─...
いいんでしょう?そしたら
私だって─...スキにするわよ。
もういい。知らないから─。」

「千夏─.....。」

「忘れないほうが良いよ?あたしは、
こんな卑怯な手も使ってたってこと。
あたしは─...絶対に絶対に
誠司のことは諦めないから─。
でも─...、もうこんな
汚い手は使わないよ。
.....ごめんなさい。」

最後の声はすごく小さかったけど
俺には聞こえた。

「千夏─「もう、あんたみたいな男なんて
どーでも良くなっちゃった。ばっか
みたいじゃーん。」

千夏は涙をこぼしながら
笑顔を俺に見せた。

「あたし、男にこんなフラれかたしたの
初めてかもしれない。誠司、
そんなにスキなら─...
あたしの分まで幸せに
してやんなよ。ばか、さよなら。
けど─...ホントはすごくすごく...
大好きだったよ。」

千夏は急に俺を抱きしめた。
でも俺は抱きしめなかった。

千夏は目を必死にこすりながら
図書室から走って
出ていった─。