「.....沙菜ちゃんの気持ちも
分かってあげて?」

「は?何だよ。つーかうららは
関係ねえだろ?」

「...沙菜ちゃんを自由にさせてあげて。」

「...ふざけんなよ!
うららも勝手に沙菜と電話なんか
しやがって!隠れて何してたんだよっ!」

「...沙菜ちゃんは、1人で苦しみを
たえてくれたんだよ?
...沙菜ちゃんは良い子だから
怒んないであげて。恨まないであげて。
沙菜ちゃんね、すごくすごく
優しいの。これからは、あたしが
悟ちゃんを支えてって。お互いに
支えあってねって言ってくれた。」

「...俺、帰る「待って!」

うららは俺の腕をぎゅっと
つかむ。
振りほどけば簡単にほどけるような
力だけどどこか寂しそうで...
ふりほどけない自分がいた。

「あたしが...あたしが悟ちゃんの
苦しみ半分にしてあげる。
だから...お願い。あたしを見て。
あたしを....1人にしないで。」

だめだ。そんなこと。

「沙菜が待ってるはず。」

「待ってないよっ!沙菜ちゃんはもう
悟ちゃんのことなんて待ってない!
悟ちゃんを待っているのは...
あたしだけ。ここだけだよ...?」

頬につめたい雫があたった。
俺は、ゆっくり空を見上げる。

雲がかかって.....太陽が見えない。
それは沙菜が俺から離れていくのを
うったえているような
気がした─。

もう俺の手にはとどかない
遠くに...沙菜が逃げていったような
気がしたのはなぜだろう─。