「子供は...どうしたんだよっ?」

「だからいないっていってるじゃない。」

「噓つくのもいい加減にしろ!」

「...知らないわよ。あたしの子供は
和也だけっ!」

「.....俺の兄弟...どこ行ったんだって
聞いてんだよ.....。」

「なっ何よそれ...。」

「俺の前にちゃんと子供いたんだろって!」

母さんはまた黙り込んだ。

「何とか..言えよ。」

すると母さんは少し間をとった。

「...いたわよ。赤ちゃん。
あんたのまえにね。」

「えっ.....?」

なんとなく予想はついていたものの
母さんの口からその言葉を
聞くと動揺している俺がいた。

「いたけどね...でもまだ正式に
結婚していたわけじゃなかったから。
毎日喧嘩も耐えなくてね...
周りは簡単にそんな子供おろせだとか
産んでも育てられないだろとか
散々めちゃくちゃなことを
言ってきた。精神的に辛かった。
けどね、無理だったのよ。
お金もないからおろすわけにもいかない。
...そしてとうとう相手には
逃げられちゃってね。ふふ、笑えるでしょ。
1人で産んで育てるって
覚悟を決めたのよ。
なのに...なのにっ.....
流産.....したのよ。」

「.....。」

あまりにも...残酷な出来事で
何もいえなかった。
知らない間に母さんが
こんなに苦労して生きていたなんて
嘘のようだった。