「...そう、なのかもな。」
「弓をすぐ引いたら的から外れるぞ。
姿勢を保って目を的から一切
そらすな。」
「.....おう。」
いつもの西本ならこんなことを言ったら
黙っていない。
でも今日は珍しく黙った。
様子がおかしいな...。
それから西本は総子にあった
弓と変えてきたらしくバンバン
的に当たっていた。
─「大宮っ。」
更衣室で着替えていると西本が
息をきらしながら話しかけてきた。
「何?そんなに。息きらしちゃって。」
「...話しがあんだ。」
──「で、話しって?」
玲奈には噓をついて先に帰ってもらった。
用事があると言ったら玲奈は口を
尖らせていたが笹野と帰ったらしい。
「...やっぱまぢでお前行くのかよ?」
「ああ。もう決めたからな。
玲奈も同意してくれたしな。」
「...お前は玲奈を置いてくのか!?」
「別においてきもしねえっつーの。
あとお前に関係ねえっつったろ。」
話しってどうせこんなことかよ。
「確かに...関係ねえかもしれねえけど...
黙って見てろって言うのか!?お前は俺に
チャンスだとかきっかけだとか
やんのかよ!?」
西本の肩が少し震えているように見えた。
「俺が...消えてもチャンスにもきっかけにも
なんもなんねえよ。」
西本は声に出さないで口で「は?」
と言う。
「だからもうお前が入れるような隙間は
俺達にはねえっつってんだよ。」