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「玲奈。帰ろうぜ。」

放課後和也が私の席の前まで
来てわたしの鞄を持ち上げた。

和也から帰ろうって言ってくるなんて
珍しいな。
いつも自然と一緒に帰るだけなのに。

でも今日って...

「和也。部活あるじゃん。」

練習試合が近いから張り切っている
部員もいるのにな。

「ふっ、今日は2人でサボるぞ。
いい場所連れてってやるからさ。」

─そういって連れてこられた場所って...

「何?ここ。」

知らない校舎が建っている。

「ここ、俺の通ってた小学校。」

「えっ?そうなのっ!?」

グラウンドでは小さな子から大きな子達が
楽しそうに遊んでいる。

「玲奈に一度見てほしくてさー。」

和也から私の手を握ってきた。

「変な和也。...悲しい事言わないでよ。」

和也は、時々平気そうな顔で残酷な事を
言う。私は、それを聞いていつも
胸の奥が痛くなる。

「はははっ。残酷だよなー。」

「何それ。やめてよ。」

和也は、楽しそうに笑っている。
でもどこか寂しそうに見えるのは...
気のせいなのだろうか。

「...いっぱい思い出作ろうね。」

「玲奈だって残酷なこと言ってんじゃんかよ。」

和也は、まだけらけら笑っている。

「...2年間その思い出で心を癒すの。」

和也は黙ったまま私を見つめる。

「...何?」

「ん?わかんない?」

だんだんお互いの顔が近づいていく。