和也Side

玲奈が風呂に入っている最中に
もちろん母さんと2人きりになった。
それは、嫌だから俺が2階に行こうと
した時だった。

「玲奈ちゃんは、大丈夫だって
言ってたわよ。」

母さんは皿を洗いながらチラッと
俺をみて言った。

「は?」

「だから良いみたいよ。九州行き。」

「...勝手に玲奈に色々言ってんじゃ
ねえよっ。」

母さんは、ずっと無表情で俺を見ている。

「んだよ。」

「玲奈ちゃんは、分かってくれたみたいだけど
あんたがどうしても残りたいなら別よ。
残ってもいいわよ。高校もせっかく
合格したんだしね。でもね、もし大学に
行くとしたら九州に
来てもらうつもりよ。そんなにお金だって
あるわけじゃないんだから。
でもね、和也。1つだけ言っとくわ。
今あんたにとって玲奈ちゃんは
かけがえのない存在なのかもしれない。
けど...将来もずっと一緒にいれる?
今だけの気持ちだけじゃ未来なんて
作れないのよ。人間は、裏切ることが
得意なんだから─。」

「...信じているんだ。」

母さんは、手を止めた。

「俺は、信じているんだ。玲奈の事を。
だから...俺も玲奈もそんな最低な事は
絶対にしねえよ─。」

─バタンッ

俺は自分の部屋に逃げた─。
現実が怖かったからだ─。

裏切りなんて...考えた事なかった。