「今日ね、先帰っててくれるかな?」

「え?あっああ。用事?」

「う...ん。ちょっと、ね?」

「あ、そ。じゃあな。」

手を振ると玲奈も照れくさそうに
手を振って小走りで玲奈は
消えていった。

俺もソレを目で見送ってから
更衣室で袴から制服に着替えた。

─────

「和也、こっちこっちー。」

Raranに入ると母さんが
いつもよりいい服を着て俺に笑顔で
手を振ってくる。
母さんの迎え側には知らない男の人が
座っている。

男の人が振り向いて初めて目が合った。
スーツを着ていて
男らしいかんじだった。
スーツも鞄も時計もこの人が
みにつけているものは全部
高級そうだった。

「初めまして。楠木慎平です。」

「はっはじめまして。こんにちは。」

楠木さんは笑うと目が下に
下がってしわがでた。
そこまで若くはなさそうだ。
母さんよりも年上そう。

「あ、座って座って。何か飲む?」

「あ、いいです。水だけで。」

「そういうわけにもいかないよ。
コーヒー飲める?」

「まあ.....。」

「よし、すいません。コーヒー1つ
ください。」

楠木さんはまた俺をみてにっこり
笑った。
優しそう。みてすぐに思った。

そして...ほんの少しだけ...
死んだ父親に似ているような
気がしたのは...気のせい
なのだろうか.....。

「こちらコーヒーでございます。」

「あ...はい。」