「エミリー様、何かあったのですか?廊下に護衛がおりましたが・・・」
日がすっかり西の山に落ちた頃、部屋に戻ったメイが心配そうな顔を向ける。
「アラン様が私の腕の怪我を心配して・・・メイが戻るまでって」
「アラン様が?もう戻られたのですか?しかも、此方にいらしたのですか?」
メイは心底驚いたように瞳を見開いたままエミリーを見つめている。
「メイ?」
驚き固まっていたメイに呼びかけると、すぐにいつもの笑顔に戻った。
だが、その表情が訝しげなものに変わる。
「お食事の準備が整ったと知らせがあったんですが・・・。今夜はいつもと違う場所らしいんです」
「違う場所?食堂じゃないの?」
いつも知らせに来る見習いコックは、様子がおかしくてなんだか慌てていた。
要領を得ない話に、今夜は違う場所での食事ということしかメイには伝わっていない。
「はい・・・もう一度確認してきます。お待ちください」
そう言うとバタバタと走っていった。
夕食は、いつも食堂で一人で食べている。
朝食はアランと一緒だが、夕食は王の塔で取っているためいつも別だ。
――違う場所って、どこ?いつもの食堂が使えないのかしら。
城の中、他に食事ができる場所っていうと・・・。
首を傾げながら塔の間取りを思い浮かべて、考えを巡らせる。
その時、部屋の扉がバンと開かれ、息を切らしたメイが部屋に飛び込んで来た。
「エミリー様、ドレスに着替えましょう。今夜は王の塔で会食です」
「会食って、もしかして国王様と皇后さまと?」
「そうです!大変です!急いで支度しなくては。もうすぐ迎えが来ちゃいます」
言いながらクローゼットを開け、沢山のドレスを前にぶつぶつ呟き始める。
「これは・・・ダメだわ・・・これも・・・。うーん・・・これが良いわ」
悩んだ末に持ってきたのは、レースの透かしの入ったラベンダー色のドレスだ。
アメジストの瞳によく似合うこのドレスは、袖が長いために腕の包帯も隠すことができる。
ささっとそれに着替えさせると、早速髪を結い始めるメイ。
「エミリー様、礼儀作法は身についていますから、緊張さえしなければ大丈夫です。皇后さまはお優しい方ですから。それに、パトリック様もご一緒とのことですので、幾分気が楽かと思われます」
突然の王家ファミリーとの食事。
心の準備もできないままだなんて、緊張しないわけがない。
粗相のない様にしなければ・・・・。
アランとの初めての朝食を思い出す。
あの時も、緊張して料理の味も何も分からなかった。
メイが手際よくエミリーの支度を終えた頃、それを見計らったかのように迎えのノックの音が部屋の中に響いた。
日がすっかり西の山に落ちた頃、部屋に戻ったメイが心配そうな顔を向ける。
「アラン様が私の腕の怪我を心配して・・・メイが戻るまでって」
「アラン様が?もう戻られたのですか?しかも、此方にいらしたのですか?」
メイは心底驚いたように瞳を見開いたままエミリーを見つめている。
「メイ?」
驚き固まっていたメイに呼びかけると、すぐにいつもの笑顔に戻った。
だが、その表情が訝しげなものに変わる。
「お食事の準備が整ったと知らせがあったんですが・・・。今夜はいつもと違う場所らしいんです」
「違う場所?食堂じゃないの?」
いつも知らせに来る見習いコックは、様子がおかしくてなんだか慌てていた。
要領を得ない話に、今夜は違う場所での食事ということしかメイには伝わっていない。
「はい・・・もう一度確認してきます。お待ちください」
そう言うとバタバタと走っていった。
夕食は、いつも食堂で一人で食べている。
朝食はアランと一緒だが、夕食は王の塔で取っているためいつも別だ。
――違う場所って、どこ?いつもの食堂が使えないのかしら。
城の中、他に食事ができる場所っていうと・・・。
首を傾げながら塔の間取りを思い浮かべて、考えを巡らせる。
その時、部屋の扉がバンと開かれ、息を切らしたメイが部屋に飛び込んで来た。
「エミリー様、ドレスに着替えましょう。今夜は王の塔で会食です」
「会食って、もしかして国王様と皇后さまと?」
「そうです!大変です!急いで支度しなくては。もうすぐ迎えが来ちゃいます」
言いながらクローゼットを開け、沢山のドレスを前にぶつぶつ呟き始める。
「これは・・・ダメだわ・・・これも・・・。うーん・・・これが良いわ」
悩んだ末に持ってきたのは、レースの透かしの入ったラベンダー色のドレスだ。
アメジストの瞳によく似合うこのドレスは、袖が長いために腕の包帯も隠すことができる。
ささっとそれに着替えさせると、早速髪を結い始めるメイ。
「エミリー様、礼儀作法は身についていますから、緊張さえしなければ大丈夫です。皇后さまはお優しい方ですから。それに、パトリック様もご一緒とのことですので、幾分気が楽かと思われます」
突然の王家ファミリーとの食事。
心の準備もできないままだなんて、緊張しないわけがない。
粗相のない様にしなければ・・・・。
アランとの初めての朝食を思い出す。
あの時も、緊張して料理の味も何も分からなかった。
メイが手際よくエミリーの支度を終えた頃、それを見計らったかのように迎えのノックの音が部屋の中に響いた。


