シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

城門を潜り、政務塔の玄関先に馬車をつけたアランは、迎えに出た使用人たちに荷ほどきを命じ、国王に帰城した旨を報告した。

アランの予定より早い帰城に戸惑いを見せたものの、国王は微笑みを浮かべて旅の疲れを労い、ラステア国王からの書状を受け取った。

国王に退室の挨拶をすると、休む間もなく留守中に溜まった書類を片づけるべく執務室に向かう。


机の上には国内で起こった出来事が記された報告書が載っている。

他には他国から来た書状と城下から届いた書状などもある。

報告書には城の中での出来事”城内案件”と城下での出来事”城外案件”が事細かに記されている。

城内案件は２件、兵士同士の喧嘩とメイドと兵士のトラブルだ。

城外案件は１０件、些細な隣人同士の争いやスリなどの犯罪などが書かれている。


アランは書類１枚１枚に目を通し、確認欄にサインをしていく。

ギディオンは治安は良い方だが、たまに悪質な事件も起こる。

王子として国の平穏を保たねばならないアランは、些細な出来事でも知っておくべきだと思っている。

そのため、この報告書の確認は、王子の重要な仕事の一つと言える。

「特に悪質なものは無かったようだな」


作業を一通り終え、壁の掛け時計に瞳を向けた。

針は午後の３時を回ったところを指している。


一息ついたアランは自分の恰好に目を向ける。

旅用の衣装はあちこちに砂埃が付き、ところどころに泥も付いている。


ブルーの瞳を思案気に伏せ、まだ封の開かれていない書状を脇に置いた。

そして報告書を処理済み箱に入れ、足早に執務室を出ていった。