峠の道を必死で荷車を引く馬たち。
この峠はヘビン方面からは非常に険しく、反対に城方面からは緩やかな坂になっている。
標高はそれほど高くはないが、他国からの旅人にとっては”泣きの峠”と言われている。
ラステアからの帰り道は他にもルートはあるが、どれも遠回りで2~3日はかかってしまう。
このルートは峠越えはあるものの、一番近道で一番早い。
頂上付近のあまりにもきつい勾配に、荷車はまったく動かなくなってしまった。
行者が鞭を振るっても、力を込めて荷車を引く馬たちの足が浮きそうになる。
そんな状況に、兵士たちは乗っていた馬を降り、荷馬車を後ろから押し始めた。
目指す頂上はあと一息なのに、荷馬車の車輪はさっきから遅々として進まない。
進んでは戻りそうになる荷車をなんとか皆で支えている。
アランも馬車から下りると、皆と一緒に荷馬車を押した。
声をかけながら、人も馬も力を振り絞る―――。
最後の坂を荷車の後輪が乗り越えた時、荷馬車が急に軽くなり、馬たちの足が軽やかに蹄の音を立てる。
兵士たちは堪らず歓喜の声を上げる。
「よく頑張ったな」
アランは馬たちを労うように鼻面を撫でた。
峠の頂上から眼下に広がるのはシャクジの森。
その先に見える白亜のギディオン城。
ほんの数日離れていただけなのに、随分久しぶりのような気がする。
エミリーは今頃何をしているのだろう。
メイド姿で書籍室にいるのだろうか。
アメジストの瞳を輝かせて微笑む顔を思い浮かべ、思わず口元が緩む。
脇では兵士たちが急勾配の坂道の影響で、緩んでいる荷車の綱を結びなおしている。
行者は馬たちの状態を確認するように1頭1頭見てまわっている。
「アラン様、準備が整いました」
ウォルターの報告とともに、再び城への道を進み始めた。
今度は緩やかな下り坂に馬たちの足も早い。
先ほどまでの状況とは一変し、あっという間に目指す城門に辿り着いた。
この峠はヘビン方面からは非常に険しく、反対に城方面からは緩やかな坂になっている。
標高はそれほど高くはないが、他国からの旅人にとっては”泣きの峠”と言われている。
ラステアからの帰り道は他にもルートはあるが、どれも遠回りで2~3日はかかってしまう。
このルートは峠越えはあるものの、一番近道で一番早い。
頂上付近のあまりにもきつい勾配に、荷車はまったく動かなくなってしまった。
行者が鞭を振るっても、力を込めて荷車を引く馬たちの足が浮きそうになる。
そんな状況に、兵士たちは乗っていた馬を降り、荷馬車を後ろから押し始めた。
目指す頂上はあと一息なのに、荷馬車の車輪はさっきから遅々として進まない。
進んでは戻りそうになる荷車をなんとか皆で支えている。
アランも馬車から下りると、皆と一緒に荷馬車を押した。
声をかけながら、人も馬も力を振り絞る―――。
最後の坂を荷車の後輪が乗り越えた時、荷馬車が急に軽くなり、馬たちの足が軽やかに蹄の音を立てる。
兵士たちは堪らず歓喜の声を上げる。
「よく頑張ったな」
アランは馬たちを労うように鼻面を撫でた。
峠の頂上から眼下に広がるのはシャクジの森。
その先に見える白亜のギディオン城。
ほんの数日離れていただけなのに、随分久しぶりのような気がする。
エミリーは今頃何をしているのだろう。
メイド姿で書籍室にいるのだろうか。
アメジストの瞳を輝かせて微笑む顔を思い浮かべ、思わず口元が緩む。
脇では兵士たちが急勾配の坂道の影響で、緩んでいる荷車の綱を結びなおしている。
行者は馬たちの状態を確認するように1頭1頭見てまわっている。
「アラン様、準備が整いました」
ウォルターの報告とともに、再び城への道を進み始めた。
今度は緩やかな下り坂に馬たちの足も早い。
先ほどまでの状況とは一変し、あっという間に目指す城門に辿り着いた。


