シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

「じゃぁ、また今度ね」

「また連絡するわ」


友人たちと別れの挨拶を交わしたメイは、城門行きの乗合馬車に乗り込む。

太陽は西の山の方へと傾きかけている。

ゆったりと心地よい揺れに身を任せること20分、馬車は城門の前に停車した。

他の多くのメイドや使用人たちと同じ様に馬車を降り、門番に許可証を見せ城門を潜る。

自分とその他数人の使用人たちを残し、多くの人は寮へと戻っていく。


城の敷地は広い。

その中でもアランの塔は城門から一番遠い。

城下で買い込んだ重い荷物が途端に恨めしくなる。

「もう少し、買い物を控えれば良かったわ」

自分の物はもちろん、エミリーへのお土産もたくさんある。

アメジストの瞳に似合いそうな綺麗な色のアクセサリーや布に、つい手が伸びてしまう。

それに、普段滅多に買い物に出ないこともあり、あれもこれもと買ってしまった。

エミリーに似合いそうなひざ丈ドレスも注文してきた。

「気に入るといいけど」

注文したドレスは後日配達される予定だ。

ドレスを着て微笑む姿を想像すると、疲れた顔に笑みが零れる。

途中のベンチに荷物を置き、手をブラブラとさせて疲れを取る

何回かの休憩の後、やっとの思いで塔の玄関が見えるところまで辿り着いた。

「やっと玄関が見えて来たわ」

荷物を持ちなおしながら、安堵の声が思わず漏れる。

さぁもうひと頑張り・・・と顔をあげたメイの目に、日の暮れかけた玄関付近に背の高い人影が立っているのが見えた。

その人影は、歩いて行く自分に気が付いたのか、ゆっくりこちらに近づいてくる。

そして傍までくると、安堵したような微笑みを浮かべた。


「君が、メイかい?待っていたよ」