「ぇっと・・・アラン様、何処に行かれるのですか?」


「心配するな。私の部屋だ」


片手で軽々と抱え直され、アランの大きな手が白い扉のノブを握った。

キィッと音を立てて開かれる扉。

広い寝室の中には、壁の灯りが小さく点されていて、真ん中にある大きなベッドの端っこだけが白く浮かび上がっている。



「これくらい暗ければ良いのであろう?」


「ぁ・・・ぁの・・・はい」


そう答えると、アランは満足げに微笑み、エミリーをベッドの真ん中にふんわりと下ろした。

仰向けになった身体の両脇がギシッと沈み込み、アランの体が上に覆いかぶさった。

僅かな明かりの中で、アランの銀髪がさらりと揺れるのが見える。



「本当なら今すぐ―――と申すところだが・・・その前に・・・」


「きゃっ・・・」



背中に手が差し入れられ、くるっと反転された。

ぽすんという音とともに、不意にうつ伏せにされ、焦ってしまい、手足をばたばたさせて起き上がろうともがくエミリー。



「・・大人しくしておれ」


「―――ぃっっ―――」



大きな掌が触れたと思ったら、急に与えられた刺激。

痛いような、気持ちいいいような、何とも言えない感覚。


アランが労わる様に、絶妙な力加減で、疲れた脚を揉みあげていた。

ふくらはぎから太ももにかけて、丁寧に揉みしだく掌。

あまりの心地良さと結婚式の疲れもあってか、瞼がどんどん重くなっていく。

アメジストの瞳が閉じられ、寝息がアランの耳に届き始めた。


ピタリと止められたふくらはぎの上の掌。

考え込むように、暫しの間止まったまま。


暫くの後、意を決したように大きな掌がするすると動いていく。

ふとももを通り過ぎ、次第に上の方に移動していった。


「ん・・・っ――――!アラン様?」


ぴくんと跳ね起きた身体が、コロンと返され、甘い唇が、頬に、唇に、顎に、首に落とされた。



「エミリーダメだ。まだ寝かせぬ・・・」




この後アランの熱い想いが、なかなかエミリーを眠らせず、大きな寝室に小さな寝息が聞こえ始めたのは、真夜中を大分過ぎた頃だった。


fin

<2012/8/17>