シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

パトリックの去った執務室の中

アランは報告書を書く手を止めたまま、宙を見つめている。


全く・・・パトリックには困ったものだ。


パトリックは女性にとても人気がある。

口が上手く、優しい物腰に優しげな眼差し。

肩まであるサラサラの銀髪とブルーの瞳はアランと同じだが

漂うオーラは優しげで、全く違うものを持っている。

目を見つめてニコリと微笑めば、落ちない女性などいないとまで言われている。

あちこちに女性がいて日替わりでデートを楽しんだり

たまに誘われたご令嬢と食事を楽しんだり

あとくされの無い一夜の愛を求めて夜町に繰り出したりしている。

俗に言う遊び人だ。

無表情で氷のような王子と呼ばれ、威厳に満ちたオーラを放つアランとは対照的なタイプだ。


こんな遊び人のパトリックではあるが

こと仕事に関してはこの国には欠かせない重要な人物だ。

人懐っこい性格で他人の懐に飛び込むのが上手いため

人脈を駆使した調査能力や、他国に対しての営業能力に大変優れている。

国中どこを探してもパトリックの右に出る者はいないだろう。

知略的な戦術も得意だ。

大抵の案件は任せておけば良い様に事が運ぶ。

アランもこの年上の従兄弟をとても頼りにしていていて

事があれば、まず最初にパトリックの意見を聞く。


そのため女性関係でもめ事があっても、大抵のことは目を瞑っている。

まぁ、もめ事といっても痴話喧嘩程度なものなので

最近は周りの者達も、たいして気にしていないのだが・・・。