シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

「もう、エミリー様ったら・・・。私、生きた心地がしません!」

今にも泣きそうな顔をしているメイ。

「ごめんなさい。無理なお願い聞いてもらって。本当に感謝しているわ」

先ほどの部屋から持ち出した掃除道具を抱え、2人は政務塔の廊下を歩いている。




事の起こりは昨晩。

夕食の後、いつものように話相手をしてくれるメイに

エミリーはずっと考えていたことを打明けた。


「メイドの仕事をさせてほしい」と。


すると、メイはとんでもないと言うように手と首をぶんぶんと振る。

「ダメです。そんなことさせられません。アラン様に叱られてしまいます」

メイは今にも泣きそうだ。

「大丈夫。メイが協力してくれれば、きっとばれないわ。

それにわたし、午後の時間何もすることがなくて・・・。

何かしたいわ・・・」


令嬢教育も礼儀作法は全てマスターしたので、今は月水金にダンス、

火木に勉学を午前中にするのみで、午後は特に何もすることがない。


「自由にしてて良い」

と言われたが、時間をもてあまし気味だ。


”働かざる者食うべからず”

両親にそう躾けられたエミリーには、城の環境は堪らなく居心地が悪い。

それにじっとしていると、つい故郷のことを考えてしまう。

それは、気分が沈んでしまうので嫌だった。



「ね?お願い。まずは・・・」


エミリーは悪戯っぽく微笑むとメイの耳元に顔を寄せた。