シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

煉瓦の小屋の中。

暖炉の前で熱く抱擁し、白い肌に唇をのせ、強い想いを印に込めるパトリック。

静かな雨音とエミリーの小さな拒絶の声が聞こえる。



「ゃッ!ィャ・・イヤ・・・・まっ・・んんっ・・・パ・・ん・・」



何度も耳に届く抗議の声を塞ぐパトリックの甘いキス。

その度に身体の奥まで蕩ける感覚と闘うエミリー。頬は薔薇色に染まり熱い吐息が漏れる。



「しーっ、エミリー黙って・・・いいかい?刻印をつけるだけだ。今はそれ以上何もしない。誰よりも君を愛してる。私の愛をこの美しい肌で感じてくれ」



耳元で甘く囁いて、再び首筋に唇を這わせた。

想いを込めて何度も唇を白い肌に落とし、アランの刻印の上に狙いを定めた。



「やっ・・お願い・・パトリックさん、イヤ」



首筋にのせられたパトリックの唇がとても熱い。



「お願い・・やめて・・・・やめて・・」



服を掴む手がさらに強まり、ギューッと引っ張られ、愛しい声は、最後には涙まじりになっていた。


はっきりと聞こえた拒絶の声に、唇を離して頭を支えていた手の力をゆるめた。

白い肌には紅い刻印がふたつ、すでに色付いている。



「エミリー、そんなに嫌なのか?私ではダメか?」



薄暗い部屋の中、パトリックの瞳は哀しげに潤み、暖炉の火で切なく揺れた。

苦し気に発せられる問いかけの声に、柔らかな身体は固く閉じられ、長い睫毛に支えきれなかった雫が頬を濡らしていく。



「わたし・・・パトリックさんのこと、好きです・・・。あたたかくて、いつも優しく包んでくれて・・・。怖いと思っていると、いつも助けてくれて・・・」



腕をゆるめたせいか、再び手が胸の前に戻り、ギュッと握りあわされた。



「ならば、どうして嫌がる?どうして私の愛に応えてくれないんだ?」


「わたし・・・今日、恋を失ったんです・・・。相手はとても高貴なお方で、想うだけでもおそれ多くて。想いは叶わないと、最初から分かっていたんです。諦めなくてはいけないと、想いを寄せてはいけないと、ずっと、ずっと思ってました。そう思えば思うほど苦しくて、切なくて、断ち切れそうもなくて―――ずっと悩んでて・・・」



「エミリー、私ならその想いを断ち切ってみせる。今、君が誰を想っていようが、私は構わない。ただ傍にいてくれるだけでいい。ただ、私の隣にいてくれればそれでいい。決して多くは望まない。だから私の元に来てくれ」



肩に置いた手を背中に伸ばして、パトリックは強い想いを込めて抱き締めた。