シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

時は戻り―――

エミリーとパトリックが煉瓦の小屋に着いてまもなくの頃のこと。

アランは政務塔の中でも、2番目に豪華な部屋で3人の紳士と話をしていた。

ふかふかの絨毯の上に、ふんわりとしたクッションの豪華なソファ。

見事な彫刻の施されたテーブルが置かれ、紳士たちは優雅にお茶を飲んでいた。

エミリーが煉瓦の家でパトリックに唇を奪われようとしているのに、どうしてこんなところにいるのか?



それは・・・もう少し時が戻る―――


それは、塔に戻るはずの傘が煉瓦の家に向かうのを見た後のこと。

部屋からすぐさま飛び出し、急いで塔の玄関から出ようとした時―――


「お待ち下さい!アラン様。お急ぎのご様子、大変申し訳ありません。御三家の方がアラン様にお目通りを願っておられます」


政務塔の警備から伝言を受けた兵は少し息を弾ませていた。



「御三家の者が何の用事だ。私は急いでおる。父君では駄目なのか?」


「月祭りの件で確認したいことがあるそうで御座います。パトリック様も不在で御座います故、アラン様でなければ・・・と申しておられます」


「分かった・・・すぐに参る」




―――そして今

テーブルの上の書類を見ながら、何本かの指が行ったり来たりしている。


時折腕を組み、考え込む紳士たち。

アランが思案げに瞳を伏せた後、書類を指して的確に答えた。

紳士たちは頷き合い、納得したような笑顔になった。



「そうですな。では、その様に致します。御忙しいところ、お呼び立て致しまして申し訳御座いません」


口鬚を生やした身なりのいい紳士が、深々と頭を下げた。


「良い。大事なこと故、構わぬ」


「時に王子様・・・。戯れに女性をお一人、塔に住まわせていると聞きました。以前、我々がサインした書類と関係があるとも聞いております。なぁサルマン殿?」


少し恰幅の良い紳士が、ニヤニヤしながらサルマンを見た後、アランを見た。

サルマンは少し顔をしかめた。


「あぁ、そうそう。何でも大層美しい方だとか。御正女様になさるとかの噂も聞いておりますが・・・。いくらお美しい方でも、御正女様になさるのはどうかと思います。せめて、御側女になされた方が宜しいのではないですか?身分も違いますし・・・。アラン様には、もっと相応しい身分の方が、引く手あまたに居られます故――」


口鬚を生やした紳士が神経質そうに眉を寄せた。