シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

小さなハンガーラックが暖炉の前に置いてある。

ハンガーにかけて服をつるすエミリー。

ガラスに映る姿を見つめるパトリック。

窓の外は静かな雨と、濡れる薔薇の花が見えるのみ。


他には何も見えない。


突きあげてくる衝動に負け、考えるより先に体は勝手に動いていき、気付けばしなやかな身体を、背中からすっぽりと包みこんでいた。


息を飲み、腕の中でビクッと震えて固くなっていく身体。


顎をくすぐる濡れたブロンドの髪。




「すまない。月祭りまで待てなくなった」



包み込んでいた腕を肩に置いて、身体の向きを変えさせて正面に向き合った。


エミリーの瞳が暖炉の明かりにゆらゆらと揺らめく。

少し身体が温まったせいか、頬がほんのりと染まっていて何とも愛らしい。


「その染まっている頬は私のせいだといいが・・・以前、噴水の前で言っただろう?月祭りの日に愛を告げに行くと」


夕暮れが迫る薄暗い小屋の中で、パトリックが溢れた想いを体中で表現しようとしていた。



「すまない。もう抑えられそうにない。今の君は私にとって魅力的すぎる・・・」



ブルーの瞳が愛しい身体を優しく撫でるように見つめた。

白いバスローブ一枚の身体、少し濡れた髪。

二人きりの部屋で何の警戒心もなく、いくら服が濡れていたとはいえ、素直にこの姿になったエミリー。


それは、私を男として見ていないのか、それとも、こうなることを覚悟していたのか。

いずれにしても、もう気持ちは抑えられそうにない。






「エミリー、君を愛してる」






頬に手をのせると、アメジストの瞳が見開き、さらに身体が固くなっていった。

手は胸の前でしっかりと握り合わされている。

そう、丁度胸を隠すように。



―――やはり警戒しているな。無理もないか・・・。



「例え今、君の心がアランの元にあったとしても、この先きっと私の方に向かせてみせる」


腰に腕をまわして引き寄せ、身体を密着させて逃がさないように力を込めた。



「だから、私についてきて欲しい。きっと幸せにしてみせる。私なら哀しい顔をさせないし、辛い想いはさせない。必ず守るから」



「パトリックさん、わたし、今・・何も考えられなくて・・・」




「考えなくてもいい。ただ、私に身を任せてくれれば、それでいい」



頬にのせていた手を後ろ髪にまわして、胸に押しつけてぎゅっと抱きしめた。