シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

シンディはうっとりとした表情で上を見つめた。もし本当にそうなったら、どんなに素敵だろう。



「ね!このことは誰にも言わないでね!?アラン様にも、お兄様にもよ?」


花が咲くような笑顔を向けてエミリーを見つめた。

言ってるうちに、自分でも本当のことのように思えてきた。



“好き”って言って、抱きついた私をアラン様は拒まなかったわ。

もしかしたら、あの後、本当にこうなったかもしれない。


シンディは恋する女の顔になり、瞳がうるうると潤んで、とても美しい。


「えぇ、分かったわ」


「アラン様がぎゅーっと抱き締めるなんて、そうそうないわ。だって氷の王子様だもの。いつも無表情で、女の人に笑いかけたこともないのよ?エミリーさんだってぎゅーっと抱き締めて貰ったことなんて、一度もないでしょ?」



――アラン様はよく抱き締めてくれる。

きっとシンディさんは、強さが違うということを言っているのね・・・

アラン様はいつも、優しく包み込んでくれるような感じで・・・

“ぎゅーっと”と言う感じではないもの。



「えぇ、無いわ・・・。アラン様は、シンディさんのこと、とても好きなのね?」


エミリーは微笑みを作ってシンディを見た。アメジストの瞳が哀しげに潤んでいる。


「やっぱりそう思う?嬉しい!私ね、子供のころからずっと、ずぅっと好きだったの。アラン様のお妃さまになるのが私の夢。マリア姫がもうすぐ来るけど、負けたくないの。マリア姫もアラン様が好きだっていう噂があるわ」



――以前会ったマリア姫はとても美しかった。

あれから何年か経ってる。

今はもっと美しくなってるに違いないわ。

女の色香で迫られたら太刀打ち出来ないかも。




「ね、応援してくれる?アラン様が妹のように大切にしているエミリーさんが協力してくれれば、とても心強いわ」


シンディは胸の前で手を組んで、キラキラと瞳を輝かせた。


――シンディさんはとても可愛くて良い子だもの。

協力なんてしなくても大丈夫だと思うけれど。

わたしには無いものをたくさん持っている。


生まれながらの高貴な方。


アラン様に相応しい方。


「えぇ、わたしに出来ることがあったら、協力するわ」


シンディは嬉しそうにエミリーに抱きついた。



「ありがとう!エミリーさん。とても心強いわ。ね!私がその書類を渡しておくわ。この後アラン様が私の舞いを見に来るから、その時に渡すわ。今行くと、仕事の邪魔になりそうよ?だから、ね?」