シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

「シンディさん、ここで何をしているの?」

「さっきまでアラン様のところにいたの。今から稽古に戻るところなんだけど・・・ね、エミリーさんは何をしに来たの?」


笑顔を向けながら、様子を窺うようにエミリーを見た。

―――本当に、何しに来たのかな。ただ、会いに来ただけ?


「あ・・・。フランクさんに頼まれて、アラン様にこの書類を渡しに来たの」

「ふーん・・・そうなの。でも今、執務室では大事な話をしているみたいだから、入らない方がいいと思うわ。私も追い出されたもの」

「そうなの・・・。どうしようかしら。お仕事の邪魔してはいけないわよね。でもコレ、急ぎの書類って言ってたの」



――エミリーさんって、やっぱりアラン様のこと好きなのかな。

何とか諦めさせて、お兄様と一緒になって貰わないと。

何とかして―――



手に持たれている書類を見ていたシンディの唇が、何かを思いついたようにフッと歪んだ。


「ね、エミリーさん、ちょっとこっち来て。護衛さん、少し離れてて。ね?」


エミリーの細い手首を掴んで廊下の隅まで引っ張っていった。



「ね、聞いて。私ね、さっきアラン様に告白したの―――」



シンディの頬が薔薇色に染まり、瞳がきらきらと輝き始めた。



「ぇ・・・告白・・・?」


「そうなの。“好き”って言ったの。そうしたらね、アラン様、どうしたと思う?」


―――どうって・・・シンディさんて、アラン様のことが好きだったの?

アラン様はマリア姫のことを想っているはずだけど・・・

でもシンディさんの表情は、なんだかとても嬉しそう。

失恋したらこんなに笑っていないわよね。



「ぇっと、ごめんなさい。分からないわ・・・」


シンディは楽しげにウフフと声を立てて笑うと、エミリーの背後にいる護衛を気にしながら、声を潜めた。


「もうすぐね、正式にお妃決まると思うけど。それまで誰にも言わないでね?あのね、”好き”って言ったら、こう、ぎゅーっと抱きしめてくれたの」


自分の身体を抱き締める仕草をしながら、嬉しそうに話すシンディ。



「だからね、私もアラン様の肩に抱きついたの。でね、その後、どうなったと思う?」



嬉しそうに笑うシンディを首を傾げて見るエミリー。



「もうっ、エミリーさんたら・・・。こういう場面に遭遇したことないの?あのね、アラン様の瞳が私の唇をじっと見つめたの。これは、キスしたいと思ってるんだなーって思ったの。だからね、そぅっと瞳を閉じたわ・・・その先は―――いくらなんでも、もう分かるでしょ?」