シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

「では、明日早朝に演習場に来るが良い。私は、普段早朝に稽古をしておる。主に寝室でトレーニングをしておるが、たまにウォルターやジェフに相手を頼むことがある。基本一人で鍛錬しておるが、演習場に参るゆえ・・・手配しておく」


「うそぉ!早朝なの?・・・ダメだわ。私そんなに早く演習場に行けないもの。辞めておくわ・・・」


かっくりと項垂れて残念がるシンディ。見たいと思ったら、どうしても見たくなってしまう。


剣を振るうアラン様って、きっと素敵なはず・・・


・・・そうだわ。さっき寝室って言ってたわ。

まだエミリーさんだって入ったことないだろうし、誰も入ったことが無いわ。

そんなことは、当たり前なんだけど。

行けばもしかしたら既成事実だって作れるかもしれないし・・・最初に入った人になるって素敵じゃない。


でも、塔の中に入ったこともないのに、いきなり寝室に行きたいって言うのは少し無謀かな?

でも目的が、レポートのためっていう大義名分があるから、きっと可笑しくはないわ。



「ね、寝室に行ってはダメなの?塔に泊めてもらったら、なんとか行けそうだわ」


「それは、いくら従妹であっても、駄目だ。シンディは塔の中に入ってはならぬ。よって、泊めることは出来ぬ。それについてのレポートはもう諦めることだ」


やっぱりダメか・・・。エミリーさんはいいのに・・・。

ほんと、身寄りがないっていうのは、凄い武器ね。


シンディはぷぅっと口を尖らせた。


「やっぱりダメなの?んもうっ・・・そうだわ!稽古って言えば・・・ね、アラン様。私ね、舞いが随分上手になったの。神官様にも褒めて貰えたわ。だから、少しだけ見に来て欲しいの。ね、少しならいいでしょう?」


甘えるような声を出して、上目遣いに隣から覗き込んだ。

少しはこっちを向いて欲しい。もう何日も通っているのに、まったく振り向いてもらえない。


「そうだな。招待する側としては、シンディがどれだけ上達したか確認せねばならんな。私の想像以上に出来ていなければ、休憩時間返上で稽古して貰うゆえ、頑張って間違えぬよう舞うが良い」


仕事の手を止めずに冷静にいう言葉は、冗談なのか本気なのか、無表情なので全く分からない。

シンディは言ったことを半分後悔しながらも、アランが自分を見てくれるということが嬉しかった。


「うそでしょう!?休憩時間返上だなんて、そんな怖いこと言わないで。アラン様、大丈夫よ。私、ちゃんと出来るから。ね!今から見に来て?いいでしょ?」


舞いにはもう、随分自信があった。

もともとダンスは得意なので、一旦覚えてしまえば間違えることはない。

アラン様に綺麗な舞いを見せて見直してもらわなくちゃ。

シンディはアランの腕をグイッと引っ張った。


「ね!アラン様、来て」