シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

医務室でこんなことが起こっていた頃。

アランは執務室で相変わらずシンディの『大人な自分攻撃』を受けていた。


月祭りまであと少し―――

今度の週末を過ぎたら来賓の方々がギディオンに続々と入国してくる。

レオ王子だって来るし、マリア姫だって来る。

そうすると、アラン様は接客に忙しくなって相手をしてくれなくなるわ。


シンディは焦っていた。なんとしても週末までにアランの気を引いておかないと、マリア姫は大人の方だし、美しい方だからアランを取られかねない。


――だって、お妃にって言う話だって出るくらいだもの。油断できないわ。

いくら、それはアラン様がすっぱり断ったって言っても。

美しくて女の色香たっぷりのマリア姫を見たら、アラン様だって男だもの。

気が変わることだってあるわ。

エミリーさんのことはお兄様に任せておいて、私は頑張ってアラン様の気を引かないと。


んもうっ、お兄様ったら“忙しいから誘えない”なんて言うもんだから、予定がすっかり狂っちゃったわ。

でも、今頃エミリーさんに会いに行っているはず。

しっかり誘惑してくれていれば良いけど・・・。

・・・ま、お兄様なら大丈夫ね。

だって、あんなに素敵なんだもの。

エミリーさんだって心が動かないはずがないわ・・・。


そうしてエミリーさんがお兄様のところに行けば、アラン様はすぐに、他に目が行くでしょ?

だって、身寄りのないエミリーさんを気遣っているだけだもの。

妹のように想っているだけだもの。

ね?アラン様。そうでしょう?だって、身分が違いすぎるもの―――



今日のアランは両手が忙しい。左手で書類を持ち、右手は何か書類を書いているので、腕には纏わりつけない。

シンディは考えた末、筋肉質な脚にそっと手を置いていた。

普段着の、少しゆったり目のズボンの上からでもうかがい知れる、鍛えられた脚の筋肉。

いつもこうして執務室に座っているのに、一体いつ鍛えているのかな?

お兄様は団長と稽古してるって言うけど、アラン様はどうしているのかしら。

シンディの美しい手がアランの脚をすーっと撫でた。


「ね、アラン様?アラン様は、いつ剣の稽古をしているの?いつもこうして執務室にいるじゃない。稽古なんてしている暇はあるんですか?私一度稽古の様子を見たいわ」

アランの邪魔にならない程度に、シンディの手が鍛えられた左腕に絡められた。


――こんなに逞しい腕に抱き締められたら、どんなに素敵かしら。

想像するだけでドキドキしちゃうわ。


絶対抱き締めて貰えるように、頑張らなきゃ。



「レポートに必要か・・・?」


「そ・・そうなの」