シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

―――罰のことを聞いた時、料理長さんの顔はキョトンとしていて、嘘を言ってるようには見えなかった。


“私は皆を罰せねばならぬ”


あの時、こう言っていたアラン様の目はとても悲しそうだった。

わたしが塔の規律を破ったせい。


皆を巻き込んでしまったせい。



塔の規律を知らなかったとはいえ、アラン様を悲しませてしまった。





ずっとアラン様の顔を見ていない・・・


今日はお元気かしら。


昨日遅くまで付き合わせてしまって、お疲れじゃないかしら。


昨夜の哀しそうな瞳のまま、わたしの記憶が止まってる。




わたしが会えるのは朝だけ・・・


わたしにとっては貴重な朝の時間



アラン様がお迎えに来てくれる朝―――


差し出される武骨な手。ブルーの瞳がいつも優しく光ってて・・・。


幸せを感じる唯一のひととき。


一国の王子様が、わたしだけのアラン様になってくれる、貴重な時間。


毎朝、ドキドキしながら待ってるの。



いつかは終わる夢だけれど、もうすぐ終わってしまう夢だけれど


残り少ない塔での生活の日々


アラン様がご婚約されるまでの間の儚い夢


まるでシンデレラね・・・



だから、どんなことがあっても朝食だけは一緒にしたいのに




“寂しいんじゃないかなぁ”


うぅん・・アラン様はそうは思っていないみたい。




“今日はエミリーを起こしてはならぬ”



どうして・・・・?


それは、わたしに会いたくないから・・・?







“これは、昨日戴いたんです”


そう言いながら、指に嵌めた小さなリングを見ていたメイの頬は、薔薇色に染まっていた。

最近綺麗になったと思っていたけれど、やっぱりそういうことだったのね。


・・・相手はジェフさんかしら?


ジェフさんのお話をするときの表情は、瞳がきらきら輝いていたもの。


きっとそうね。メイが羨ましいわ・・・。



好きな人と結ばれるのが一番いいもの。




メイには、わたしの分まで幸せになって欲しい。