シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

「こんにちは。リードさんはいますか?」

いつものように医務室を覗くと、今日はリードではなく、フランクの背中がこちらを向いていた。

さっさと動くフランクの手。どうやら、小鳥の包帯を取っているようだ。


「あぁ、エミリーさん、いらっしゃい。小鳥の怪我も随分良くなりましたよ。もう少しで包帯が取れそうです」

眼鏡の奥を真剣に光らせながら、フランクは小鳥を手に持ち、羽を伸ばして丁寧に確認していた。


「私がいない間、リードも随分頑張って世話をしたようですね」


「そうなんです。とても一生懸命世話をしてくださいました」


ぶつぶつ言いながらも放棄することなく世話をしてくれたリード。

今日はいないけれど、どこかに行ってるのかしら。


嫌がる小鳥のくちばしを避け、器用に動くピンセット。

さすがに助手とは違い、手の中で動き回る小鳥を上手になだめながら包帯をさっさと巻いていく。


「今日は、わたしのお手伝いは要らないわね」

あまりにも鮮やかに治療を進めていくフランクの手に、感心してしまう。




「今リードは治療室の方にいます。あちらで何か作業をしているようですよ」


フランクは治療室の方を見やり、意味ありげにクスッと笑った。


フランクの脳裏に、今朝のリードの様子が思い返された。

そわそわしたリードの顔。

あんな顔をするのを見たのは初めてだった。


話をしながらも相変わらず器用に動くフランクの手。

その鮮やかな指先を見つめながら、エミリーは、料理長のことを思い返していた。




ここに来る前のこと―――

いつもより少し遅い朝食を食べた後、キッチンに向かったエミリーは、料理長に昨日のことを謝って、いっしょに罰を受けさせてもらおうと考えていた。


アランの塔の1階の奥の部屋

開け放たれた扉の向こうから漏れ聞こえる、カチャカチャと響く食器の音と大きな声で交わされる会話。

声をかけるのもはばかれるように、忙しく動く使用人。

そんな活気溢れるキッチンは、昼食の下ごしらえの真っ最中のようで、見習いコックたちが沢山の野菜を洗ったり切ったりしていて、料理長は副長と紙を見ながら何か話をしているところだった。


「あの、すみません。料理長さん」