シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

それから数時間の時が経ち―――今

相変わらず、朝なのに暗い部屋の中。

エミリーはベッドの上で、瞳を瞬かせていた。

起きた瞬間、自分が何処にいるのか分からなくなってしまっていた。


――――何でわたし、ここにいるの?

えっと・・・わたしはあの時、アラン様に涙を見せたくなくて、一人になりたくて、アラン様にお部屋に戻って貰うようにお願いして・・・。

そのあと、払っても払っても沸き上がってくる想いが制御できなくて、どうしようもなくて、涙が止まらなかったことまでは覚えてる。

その後、どうやってここに戻ったのかしら・・・?

どうしてベッドにいるの?

どんなに考えても、お部屋に戻った記憶がないのだけれど。

いくらなんでも、政務塔から歩いて戻れば覚えているわ。

なのに、目が覚めたらベッドの中で・・・

しかも、着ているのは服ではなくてナイトドレスで。

わたし、いつの間に着替えたの?

まさか、眠りながら着替えたの??・・・それとも―――


確かめるように、シフォンのカーテンを開いて辺りを見回してみた。

夢じゃないなら、あれがどこかにあるはず・・・。


すると、ベッド脇のテーブルの上で、それが存在を主張するようにキラリと光った。


――やっぱり夢じゃないわ。

ということは・・・・誰かにここまで運んでもらったということ。

まさか、その人が着替えを??ウソでしょう・・・・。


“廊下に警備兵を配しておく”


熱くなっていく頬を両手で包んだ。

まさか・・・警備兵の方が??いったい誰なの―――?

どうしよう・・知りたいような、知るのが怖いような・・・。



「おはようございます」


静かな中に突然響いた明るく元気な声に、ビクッと身体が震えた。

昨夜から驚いてばかり。アラン様じゃないけれど、ホント心臓に悪い。


「エミリー様、今日は雨が降っているんですよ」


メイは待ちかまえていた様に真っ直ぐ窓に向かって、早速カーテンを開けた。

窓の外のテーブルセットには、しとしとと柔らかな雨が当たり、いつも聞こえてくる小鳥の囀りもない。

とても静かな城の朝。


「朝食はこちらに準備してあります。アラン様が“今日は、エミリーを起こしてはならぬ”とおっしゃったそうで、昨夜は何かあったんですか?」

メイの瞳が何か期待しているような光りを宿して、にこにこ笑っている。


「え・・・っと、何かあったって言えば、あったけれど・・・」

「やっぱりそうなんですか。そうですか」

意味ありげににっこりと笑うメイの指に、キラリと光るモノが見えた。