シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

ギディオンの城の朝。

空にはどんよりと雲がかかり、庭の花にしとしと柔らかな雨を落としている。

登城する早出の使用人たちの傘の花が咲き、久しぶりの雨に城の木々も水を含んだ枝を重そうに擡げている。

小鳥たちの囀りもなく、とても静かな朝の部屋―――

凛々しく形の良い眉がピクッと動き、瞼からスゥと深い青の瞳が覗いた。


――暗いな。今日は天候が悪いのか。


いつもより少し早く起き、枕元に置いた小さな時計を見て、直ぐ様スイッチを探って目覚ましを切った。

少し身動ぎをしたせいか、胸の辺りの服がキュッと引っ張られた。


―――っ・・・しまったな。起こしたか・・・?


自分の部屋とは違い、分厚いカーテンの下がるこの部屋は、外の天気も相まって普段よりもさらに暗い。

シフォンに囲まれた暗いベッドの中、自分の腕の中を確認すると、愛しい者は豊かなブロンドの髪を惜しげもなくベッドの上に散らして、スヤスヤと眠っていた。

ホッと安堵の息を漏らし、服を掴む愛らしい指を丁寧に解いて、指先と額に口づけをした。


―――もう暫しの間君を腕の中に抱いておきたいが、そうもいかぬ・・・。


武骨な指が、ふっくらとした唇の輪郭をそっと辿った。


こんなに触れたいと思うのも、こんな風に自分を抑えるのも、君だけのことだ。



昨夜は何故泣いておった?

何故一人になりたがった?



君はいつも私を惑わせるな・・・。



しかし、そろそろ行かねば・・本当に起きてしまいそうだ。


頬が預けられている腕を名残惜しげに引き抜き、クッションを引き寄せて頬を預け、そっとベッドから滑り出て乱れた布団とブロンドの髪を整えた。

暫くの間寝顔を愛しげに見つめたあと、もう一度額に口づけをして静かに部屋を出た。



廊下には、朝勤の警備兵が扉の前で頭を下げて立っていた。


「もうすぐナミが来る。“今日は起こさずとも良い”と申し伝えよ」


寝室に向かっていると、夜勤の警備兵がスッと近付いて丁寧に頭を下げた。

「おはようございます。アラン様、どうか私に罰をお与えください。昨夜迂闊にもエミリー様をお部屋から出してしまいました。塔を抜け出されたことについて、すべての根本原因は、私に御座います。故に、エミリー様は全く悪く御座いません」


「ご苦労、分かっておる。報告書を見てウォルターと協議し、それぞれの罰を決める故、待っておれ」