書棚に神話の本を戻し、スタスタと歩くアラン。
俯くエミリーをチラリとも見ずに脇をすり抜け、足早に歩いて行ってしまう。
書棚の間を通り抜けていく静かな足音が遠ざかり、やがて、パタンと扉が閉じられた。
その音と同時に、白い綺麗な脚がガクッと膝から崩れ落ち、へなへなとその場に座り込んだ。
両手にはしおりを握りしめたまま、下をじっと見ているエミリー。
その頭上に、白い影がスゥと忍び寄った。
幾つかの白い影が、遠慮がちに天井近くをさまよっている。
その影たちが代わる代わるに書籍室の入口の方へ行っては戻り、エミリーの頭上をホワホワと漂う。
児童書の棚の片隅で、蹲る小さな身体から漏れ聞こえてくる嗚咽。
それはとても小さいけれど、物音のしない静かな書籍室の中には哀しげに響く。
細くて小さな肩が小刻みに震え、溢れる雫を支え切れなかった睫毛から、一滴一滴、するすると雫が滑り落ちていく。
大粒の雫が銀のしおりを濡らし、小さな掌に流れ落ちた。
涙となって溢れ出る想い。
雫はぽたぽたと留まることなく零れ落ち、しおりに刻まれたシャクジの花を濡らしていく。
仄かな灯りにキラリと光る銀のしおり。
真夜中の書籍室でひとり涙にくれるエミリー。
制御できない感情の波に翻弄され、その場から動くことが出来ない。
燭台の火が消え、辺りは闇に染まってもそれは続いた。
ひとりぼっちで蹲る小さな身体は、その場から動くことが無く、漏れ聞こえていた嗚咽は、いつの間にか規則的な息遣いに変わっていた。
頬は涙に濡れたまま、手にはしおりを持ったまま。
ずっと頭上に留まり続けていた白い影が、スゥと離れて書棚の向こうに消えていく。
ふわふわとした残像を残しながら移動したそれは、扉の脇で年配の男性の姿になり、ホワホワと唇を動かした。
白い影の前には、腕を組んだ姿勢で壁にもたれて佇む一つの人影。
扉の脇の壁にもたれてずっとそこにいた人影は、白い影が近づいた後、灯りの消えた書籍室の中を、すぐにスタスタと歩き出した。
幾つかの青年書の書棚を通りすぎると、児童書の書棚がある。
そこの中程の片隅で書棚に背中を預け、ひっそりと床に座り込む小さな身体。
小さな窓から差し込む僅かな月明かりの中に、はっきりと映る小さな身体。
手にはしっかりとしおりを握りしめ、長い睫毛と頬は涙に濡れたまま、静かな寝息をたてている。
その前で筋肉質な脚が膝をつき、広い背中がごそごそと動いた。
濡れた頬を真っ白なハンカチが丁寧に拭い、少し濡れた髪もさっと拭いた。
白い手の中からしおりを取って懐に仕舞うと、身体に腕を差し入れて起こさないように気をつけながら大切そうに抱えた。
ふわふわなブロンドの髪に顔を埋め、聞き取れないほどの小さな声でそっと囁いた。
「もう、気はすんだか?」
俯くエミリーをチラリとも見ずに脇をすり抜け、足早に歩いて行ってしまう。
書棚の間を通り抜けていく静かな足音が遠ざかり、やがて、パタンと扉が閉じられた。
その音と同時に、白い綺麗な脚がガクッと膝から崩れ落ち、へなへなとその場に座り込んだ。
両手にはしおりを握りしめたまま、下をじっと見ているエミリー。
その頭上に、白い影がスゥと忍び寄った。
幾つかの白い影が、遠慮がちに天井近くをさまよっている。
その影たちが代わる代わるに書籍室の入口の方へ行っては戻り、エミリーの頭上をホワホワと漂う。
児童書の棚の片隅で、蹲る小さな身体から漏れ聞こえてくる嗚咽。
それはとても小さいけれど、物音のしない静かな書籍室の中には哀しげに響く。
細くて小さな肩が小刻みに震え、溢れる雫を支え切れなかった睫毛から、一滴一滴、するすると雫が滑り落ちていく。
大粒の雫が銀のしおりを濡らし、小さな掌に流れ落ちた。
涙となって溢れ出る想い。
雫はぽたぽたと留まることなく零れ落ち、しおりに刻まれたシャクジの花を濡らしていく。
仄かな灯りにキラリと光る銀のしおり。
真夜中の書籍室でひとり涙にくれるエミリー。
制御できない感情の波に翻弄され、その場から動くことが出来ない。
燭台の火が消え、辺りは闇に染まってもそれは続いた。
ひとりぼっちで蹲る小さな身体は、その場から動くことが無く、漏れ聞こえていた嗚咽は、いつの間にか規則的な息遣いに変わっていた。
頬は涙に濡れたまま、手にはしおりを持ったまま。
ずっと頭上に留まり続けていた白い影が、スゥと離れて書棚の向こうに消えていく。
ふわふわとした残像を残しながら移動したそれは、扉の脇で年配の男性の姿になり、ホワホワと唇を動かした。
白い影の前には、腕を組んだ姿勢で壁にもたれて佇む一つの人影。
扉の脇の壁にもたれてずっとそこにいた人影は、白い影が近づいた後、灯りの消えた書籍室の中を、すぐにスタスタと歩き出した。
幾つかの青年書の書棚を通りすぎると、児童書の書棚がある。
そこの中程の片隅で書棚に背中を預け、ひっそりと床に座り込む小さな身体。
小さな窓から差し込む僅かな月明かりの中に、はっきりと映る小さな身体。
手にはしっかりとしおりを握りしめ、長い睫毛と頬は涙に濡れたまま、静かな寝息をたてている。
その前で筋肉質な脚が膝をつき、広い背中がごそごそと動いた。
濡れた頬を真っ白なハンカチが丁寧に拭い、少し濡れた髪もさっと拭いた。
白い手の中からしおりを取って懐に仕舞うと、身体に腕を差し入れて起こさないように気をつけながら大切そうに抱えた。
ふわふわなブロンドの髪に顔を埋め、聞き取れないほどの小さな声でそっと囁いた。
「もう、気はすんだか?」


