シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

「それは・・・ちょっと・・」

オロオロとした声を出し、料理長は鋭い視線から守るように、腕を後ろに回して男の子を庇った。


「ちょっと?・・まさか“出来ない”と言うのですか?」


鋭い瞳が料理長を睨む。


「恥ずかしがりやなもんですから、どうか勘弁して下さい」


ふっくらとした腕が男の子を庇っている。

料理長は必死に頭を下げて訴えた。

一向に進まない事態に焦れるウォルター。



「すみません、強行手段を取らせて頂きます」



言葉とともにウォルターの鍛えた腕が、ふっくらとした腕をグイッと押し退けた。

益々身を固くして後退っていく男の子。



「無理矢理にはしたくありません。自分で取っていただけると良いのですが、その様子では無理でしょう」



日焼けした腕が白い大きな帽子に伸びていく。

帽子を取られるのが余程嫌なのか、両手で帽子の端を掴んでどんどん後退る男の子。

嫌がる男の子の帽子を執拗に狙う、日焼けした筋肉質な腕。



「どうか、大人しくしてください。このままでは、私はあなたを捕えざるをえません」



逃げ回る身体を抑えようと男の子の白い腕に日焼けした黒い手が伸びて行く。

後ろは壁、隣には料理長の背中、前には怖い顔のウォルター。

逃げ場がなくなり、とうとう男の子はその場に蹲って、キュッと身を堅くした。

日焼けした手が帽子を押さえる白い手に覆い被さる―――




「待て!その者に触れてはならぬ」




廊下に響き渡る威厳のある声。

アランが、政務塔の方からスタスタと此方に歩いて来た。

その声に直ぐ様反応し、ウォルターは男の子に伸ばしていた手を引っ込めて、丁寧に頭を下げた。



「ウォルター、ここで何をしておる。誰に、手を掛けようとしておる」



ウォルターを見据えるブルーの瞳に、冷たい影が宿っている。


「アラン様、申し訳ありません。ですが、このような時刻にここにおられるなどあり得ないこと。確認が必要だと判断致しました。それにこのようなことは決してしてはならないことと、分かって頂きたく。故に、失礼を承知の上で強行手段に出た次第です。すべては、お守りするためです」


ウォルターは一歩前に進み出て、威厳ある瞳を見た。そのゆるぎない信念と態度こそ、日頃からアランの厚い信頼を得ているもの。



「私は、お守りするためであれば、どんな僅かなことも見逃すつもりはありません。それが例え、アラン様のお怒りに触れることであっても、です。このウォルター、警備責任者として、首をかける覚悟は常に持っております」