シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

シンディが馬車止まりに向かっている頃。


アランの塔の3階では、エミリーがメイと一緒に夕食後のお茶を楽しみ始めていた。

楽しげな笑い声が部屋の中に響く。

エミリーは既にシャワーを浴びたようで、メイが用意してくれたナイトドレスを着ていた。


ふんわりとしたクッションのある椅子、奇麗に磨き上げられた猫足のテーブル。

その上には、トレイに載った薔薇の花模様のポットとカップ。

それにすみれの砂糖漬けが入った小さなお皿。

陶器は全部金の縁取りがある豪華なもの。

この部屋で使われているものはみんな、綺麗な花模様が施されている。

これは全部花が好きなエミリーのためにと、アランが用意させたもの。

それを知らないのはもちろん、当のエミリーだけ。



毎晩メイが用意してくれるお茶は、リラックス作用があってよく眠れるもの。

この国に来たばかりの頃“眠れないなら”と用意してくれたのをきっかけに、それからずっとこうしてお喋りしながら飲んでいる。

今日はカモミールティーのようで、甘いリンゴのような香りが、ポットからほんのりと漂ってきた。


メイは綺麗な薔薇模様のカップにそれを丁寧に注いで、お砂糖を入れてかき混ぜた。

金のティースプーンが部屋の灯りでキラッと鈍い光を放つ。




「エミリー様、今日シンディ様と昼食をとったそうですけど、シンディ様ってどんな方ですか?噂ですと、とてもスタイルが良くて可愛いってことですけど・・・」



メイは、エミリーの前にカップを置くと、自分のカップをトレイから取り出して、同じように注いだ。

メイのカップはとてもシンプルなもので、小さな赤いハートが一つ真ん中についているだけで、あとは何の模様もついてない。




「シンディさんは、とても可愛くて明るくて良い子よ。そうね、スタイルもいいわ。背もわたしより高いし、モデルさんみたいに素敵よ。それにね、パトリックさんのことが大好きみたい。昼食の間中ずっと、お兄様のことを聞かされたわ」



パトリックのことを話すシンディの表情を思い出して、クスッと笑った。

一つ一つのエピソードを丁寧に話す表情は、とても嬉しそうで、自慢げだった。


兄妹のいないエミリーには、それがとても微笑ましくて、羨ましく思えた。



「そうなんですか。やっぱり可愛い方なんですね。でも、エミリー様には敵いませんよ?・・・メイド部屋の噂だと、シンディ様はアラン様の気を引こうとしてるって言ってますけど。アラン様にはもう既に、しっかりと心に決めた方がいらっしゃいますから。その方には、シンディ様ではとても敵いませんから」