シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

冷たく言い放つと、二人の使用人はオロオロとして、今にも泣きそうな顔をしている。

ここまでリードを連れてきた使用人は息を弾ませながら哀しそうにリードを見た。


「でも、我々よりは分かるでしょう?」


木の根元に蹲る様にしているモルトは、顔を真っ赤にして苦しげに呼吸をしている。


「しょうがないな・・・」


リードは歩み寄ってフランクがいつもしているような触診をし始めた。

その様子を三人の使用人が息を飲んで見つめている。脈を計り、額に手を当ててみるリード。


・・・かなり熱が高い。脈も早いし、これは―――

「・・・あなたは、演習場にいる医官を呼んで来て下さい。それから、医務室に運びたいのですが・・・あなたとあなた、二人で担げますか?」

二人の使用人は顔を見合わせると、急いでモルトの体に腕を差し入れた。





「ね!アラン様、午前中は何処に行ってたの?せっかく来たのに、いないんじゃレポートが出来ないわ」

シンディの甘えたような声が執務室の中に響く。

アランの隣にピタッとくっついて座るシンディ。短いスカートから覗く白い足が惜しげもなくすぅっと伸び、筋肉質な脚にピトッとくっついている。


「すまぬ。急用が出来てそっちに参っておった。シンディは舞いの稽古は進んでおるのか?」


「それが、なかなか難しくて、叱られてばかりなの。イヤになっちゃうわ。でも、アラン様が見に来てくれたら、頑張っちゃうかも?」


シンディは書状を書いている忙しそうな右手を見ながら、暇そうな左腕にギュッと抱きついた。逞しい二の腕にひたりと頬を寄せる。


「ね、アラン様、今何を書いているの?」


「これは、月祭りの招待状を書いておる。今年はガーデンパーティを開くことが出来なかった故、代わりにと。父君の命だ。・・・シンディ、レオ王子も招待する。楽しみにしておくが良い」


「うそ!レオ王子も招待するの?他は?」


シンディの表情がパッと明るくなった。


「そうだな、マリア姫も来る。シンディ、レオ王子に下手な舞いは見せられぬな。頑張って練習するが良い」


シンディは、レオ王子のグリーンの瞳を思い浮かべた。

数年前に会ったレオ王子は快活でとても素敵な人だった。少し、いいなと思っている人でもある。

でも、アランには到底叶わない。今はアランの気を引くことに精一杯のシンディ。


「レオ王子は関係ないわ」


ぷうっと口を尖らせて反論するも、アランは無表情のまま書状を書いている。


ここまで、ずっと羽ペンを止めることなく、シンディの相手をするアラン。

いくらシンディが左腕に身体を纏わりつかせようと、スッと伸びた綺麗な脚を見せようと、何をしてもアランの気を引くことが全く出来ない。