シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

自分に言い聞かせているようなエミリーの声は、少し沈んでいる。アメジストの瞳は切なげに伏せられていた。

その様子を見て、不敵な笑みを浮かべるシンディ。もうひと押しで思惑通りに事が運びそうだ。



「そうよ。だから、早くアラン様を安心させてあげて。お兄様は本当に素敵な人よ。私の自慢のお兄様なの。強くて優しくて。隣に居たがる女性はとても多いわ・・・。この間も誰か訪ねてきてたけど、優しく追い払っていたもの。お兄様は、ほんとうにエミリーさんのことを想ってるの。昨日だってそれはもう、酷いものだったわ・・・」


昨夜、食事の間中ずっと説教されていたシンディ。

少しは褒めてもらえると思っていたのに、あんなに怒ったパトリックを見るのは初めてだった。

もう思い返すのもうんざりと言ったように、深くため息を吐いた。



「ね!エミリーさんはお兄様のこと、どう思っているの?」



いきなりの直球な質問に戸惑うエミリー。

そんなこと急に聞かれても答えを用意していない。


「・・・え・・・っと・・そうね・・・」


―――パトリックさんは優しい。

危険な時や怖い時、いつも守ってくれていた。

それはいつも自然で、そこに居るのが当たり前のことのように。

”怖い”と思っていると、いつの間にかいつも傍に居て、優しい腕の中に入れてくれていた。

いつも見せてくれる甘い微笑みが思い浮かぶ―――



「そうね、優しくて、とても素敵な方だと思うわ」


「じゃ、嫌いじゃないってことね?ね、今度一緒に食事するといいわ。きっともっと好きになるわ。それに、エミリーさんだってたまには外食したいでしょう?私、お兄様に誘うように言うから。ね?」


シンディはウィンクをすると、嬉しそうにチキンソテーをほおばった。


「でも、アラン様が出かけることを許してくれないかもしれないわ」


昨日のことで今朝叱られたばかり。

今朝の様子だと、暫くは外出を控えた方がよさそうに思えた。

それに城の外に出るなんて初めてのこと。

シルヴァの屋敷から帰ってから、一段と過保護になったアラン。

城内でさえ外出を控えるように言われているのに、城下なんて、そんなことはとても許して貰えそうにない。


「それは、大丈夫!だって、お兄様が一緒なんだから。ね?お兄様って、あぁ見えてもすごく強いのよ?もしかしたら、アラン様より強いかもしれないわ。私からもアラン様にそれとなく言っておくから、エミリーさんは、お兄様と出かけたいってお願いしてみて。きっと大丈夫よ」


シンディは花が咲くような笑顔をエミリーに向けた。