シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

「ね、エミリーさん・・・。昨日はごめんなさい。私があんなことを頼んだせいで・・。私、昨夜お兄様に叱られちゃったわ。“彼女にあんなことをさせるな”って。それはもう凄い剣幕で―――」

シンディは申し訳なさそうにペコっと頭を下げた。



「ほんとうに、ごめんなさい。あんなことで身の危険があるなんて、私知らなくて」


銀の髪がさらりと揺れ、小さな顔を隠してしまっている。

項垂れたまま発せられた声は少し震えていて、昨夜パトリックに相当きつく叱られたことを物語っていた。



「シンディさん、そんなに謝らないでください。わたしも、あんなことになるなんて思ってなかったし・・・。わたしも、今朝アラン様に叱られちゃったわ。出かけるときは、一言必ず言いなさいって」


アランの名前に反応し、シンディは弾けるように頭をあげた。



「アラン様が?・・・あの、聞いてもいいですか?」



さっきの声と違い、少し低くなった声。テーブルの向こうでブルーの瞳がキラッと輝いてエミリーを見据えていた。



「エミリーさんとアラン様の関係ってどういうものなんですか?お兄様は、”アランは彼女のことを特別な人だと思ってるようだ”って言ってたけど。実際どうなんですか?」



真剣に問い掛けるシンディの表情に、エミリーは戸惑い、アメジストの瞳を空に彷徨わせた。



「え・・っと・・・関係って言っても・・」


―――関係って、どう答えればいいのかしら・・・。特別な人って、そんなはずはないけれど―――


「多分、アラン様はわたしのことを妹のように思ってるんじゃないかしら。だから・・・特別って言うか、わたしは異国の出身で、この国に慣れていないから、それを気に掛けて、心配しているだけだと思うわ。シンディさんだって、パトリックさんに守って貰ってるでしょう?それと同じ様なものだと思うわ」


シンディの大きなブルーの瞳が少し見開いたあと、フッと緩み、形の良い唇が少し歪んだ。

その表情は、パトリックのあの不敵な笑みによく似ている。


「やっぱりそうなの?昨日、エミリーさんとお兄様が仲良く歩いてくるのを、アラン様はじっと見てたわ。あの通り、いつも無表情だから、何考えてるんだろうって思ってたけど、そういうことなのね?きっと、自分以外に守ってくれる人が出来たことを喜んでいたんだわ。だって、エミリーさんがお嫁に行かないと、アラン様は安心してお妃さまを迎えられないでしょう?」


シンディの瞳が様子を探る様にアメジストの瞳を見つめている。


「そうね・・・アラン様もお年頃だから、早くお妃さまを迎えないといけないものね・・・いつまでも、お世話になっていては駄目ね・・・」