シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】

”そんなにそれが苦手ならば、倒れるほどに我慢してはならぬ。他の者に任せれば良い。これから王家の者として、もっと人を使うことを覚えねばな?・・・だが、君のことだ。これからも、何もかも自分でやろうとするのだろうな。そこが君らしくて良いのだが・・・全く、困ったものだ・・・”


さっき医務室で言っていた言葉。

アラン様は少し困ったような顔で暫く手を握っていた。


これは一体どういう意味なのかしら?


”王家の者として”ってどういうこと?


わたし、王家の人になるの?



―――そういえば会食のあのとき、国王様と皇后様が―――

「こんな素敵なお嬢さんが私たちの娘になってくれたら、とても嬉しいことですわ。こんな様子、この先二度とないかもしれませんもの。ねぇ、国王様?」

ニッコリと柔らかな微笑みを浮かべてエミリーを見つめる皇后。

その隣で国王もアランと同じブルーの瞳を優しく輝かせていた。

「おぉ、そうじゃな。それは素晴らしいことじゃ。だが、それはどうかのう、アラン?」


あの会食の夜に交わされていた、この会話。

あの時は自分のことで精一杯で、気にとめていなかったけれど。

この会話の意味は、まさか、そういうことだったの?



もしかしてあの会食は、そんな意味でわたしを―――



「ね!エミリーさん、聞いてますか?私のお話」


少し怒りを含んで発せられた、鋭いけれど甘くて可愛い声。

ハッと気が付くと、テーブルの向こうで、シンディがぷぅっと頬をふくらませていた。小さな顔に大きなブルーの瞳がとても可愛い。


ちょうどお昼の時間。ここは政務塔の中の一室。

シンプルで機能的な家具が整えられたこの部屋は、普段は来訪された方が休憩したり軽い食事をしたりするところ。

エミリーはシンディと一緒に昼食をとっていた。

丸いテーブルの上には、お洒落なカフェランチのように作られたプレートが二つのっている。


お話好きなシンディは、さっきからずっと一人で喋っていたが、問い掛けてもまったく返事がないので、少し怒っているようだった。


「あ、ごめんなさい。少し考え事をしていたものだから・・・何だったかしら?えっと・・」


頭をカクッと項垂れて、呆れたようにため息をついたあと、シンディは口を尖らせてまっすぐエミリーを見た。


「もうっ、やっぱり聞いてなかった!エミリーさんったら・・・」


シンディはチキンのソテーをフォークに刺して、パクっと口に入れた。

そして、何か考え込むように目の前のプレートを見つめたあと、ナイフとフォークをプレートの上に置いて、真っ直ぐにエミリーを見た。