「あの嵐の後、緊急で揃えた花も何とか根付きました。月祭りの頃には、来賓の目を楽しませることが出来そうです」
モルトは疲れた目を擦りながら、眠そうに欠伸をした。
・・・ここのところ忙しくて、よく寝ていない。
昨日は早朝から夕暮れまで作業をしていた。
そのあとも道具の手入れなんかをしていたら、すっかり遅くなってしまった。
歳のせいか、きつくなってきたな・・・。
「大丈夫ですか?なんだかお疲れのようですけど・・・。そうだわ。わたしお手伝いします。これでも、お花の手入れは得意なんですよ?」
白くて長い指が、モルトの足元にあったスコップを握った。
「故郷の家の庭はいつも手伝いをしてましたから。お花の手入れには自信があるんです」
人差し指を立てて自信ありげに笑顔を作ると、すっと立ち上がった。
モルトの目が大きく見開かれ、とんでもないと言うように、ごつごつした手をぶんぶんと横に振った。
「いけません。エミリー様にそんなことをさせたら、アラン様に叱られます。お気持ちだけで十分です。どうかお座り下さい」
モルトは慌ててスコップを奪い返し、エミリーがベンチに座ったのを確認すると、ふーっと大きく息を吐いた。
「しかし、エミリー様は不思議な方ですな・・・」
モルトはどこか遠くを見つめるように、目をすーっと細めた。
「・・・モルトさん?」
「―――いや、なんでもありません。私はそろそろ仕事に戻らなければ。弟子を待たせたままだ」
モルトは腰を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
・・・最近少し腰が痛む・・・もうあまり無理は出来んな。
「ぁ・・・ごめんなさい。お忙しいのに、引き留めてしまって。モルトさん、本当に大丈夫ですか?」
エミリーも急いで立ち上がって、モルトの足元にあるバケツを拾って渡した。
「あぁ、すみません・・・大丈夫、そんなに心配しないで下さい」
「でも、なんだかほんとうに顔色が悪いわ。あまり夜遅くまで、作業しないで。無理しないでくださいね」
エミリーは心配そうにモルトの体を調べるように見た。
モルトさん、さっきから腰に手を当てているわ。なんだかとても痛そう・・・。
「そうですな。今日は早く帰ります。あ、薔薇園は少しですが花が戻ってきました。豪華絢爛と言うわけにはいかないですが、少しは楽しめますので、またご覧になって下さい」
にこやかに微笑むとモルトは噴水の向こうにゆっくりと消えていった。
モルトは疲れた目を擦りながら、眠そうに欠伸をした。
・・・ここのところ忙しくて、よく寝ていない。
昨日は早朝から夕暮れまで作業をしていた。
そのあとも道具の手入れなんかをしていたら、すっかり遅くなってしまった。
歳のせいか、きつくなってきたな・・・。
「大丈夫ですか?なんだかお疲れのようですけど・・・。そうだわ。わたしお手伝いします。これでも、お花の手入れは得意なんですよ?」
白くて長い指が、モルトの足元にあったスコップを握った。
「故郷の家の庭はいつも手伝いをしてましたから。お花の手入れには自信があるんです」
人差し指を立てて自信ありげに笑顔を作ると、すっと立ち上がった。
モルトの目が大きく見開かれ、とんでもないと言うように、ごつごつした手をぶんぶんと横に振った。
「いけません。エミリー様にそんなことをさせたら、アラン様に叱られます。お気持ちだけで十分です。どうかお座り下さい」
モルトは慌ててスコップを奪い返し、エミリーがベンチに座ったのを確認すると、ふーっと大きく息を吐いた。
「しかし、エミリー様は不思議な方ですな・・・」
モルトはどこか遠くを見つめるように、目をすーっと細めた。
「・・・モルトさん?」
「―――いや、なんでもありません。私はそろそろ仕事に戻らなければ。弟子を待たせたままだ」
モルトは腰を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
・・・最近少し腰が痛む・・・もうあまり無理は出来んな。
「ぁ・・・ごめんなさい。お忙しいのに、引き留めてしまって。モルトさん、本当に大丈夫ですか?」
エミリーも急いで立ち上がって、モルトの足元にあるバケツを拾って渡した。
「あぁ、すみません・・・大丈夫、そんなに心配しないで下さい」
「でも、なんだかほんとうに顔色が悪いわ。あまり夜遅くまで、作業しないで。無理しないでくださいね」
エミリーは心配そうにモルトの体を調べるように見た。
モルトさん、さっきから腰に手を当てているわ。なんだかとても痛そう・・・。
「そうですな。今日は早く帰ります。あ、薔薇園は少しですが花が戻ってきました。豪華絢爛と言うわけにはいかないですが、少しは楽しめますので、またご覧になって下さい」
にこやかに微笑むとモルトは噴水の向こうにゆっくりと消えていった。


